権妻ごんさい)” の例文
女教師鴎外、芸妓紅葉、女生徒さざなみ、女壮士正太夫しょうだゆう権妻ごんさい美妙、女役者水蔭すいいん比丘尼びくに露伴、後室こうしつ逍遥、踊の師匠眉山、町家の女房柳浪。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
最初は日本の旧習を参酌さんしゃくして欧州の法典を折衷せっちゅうし、従来の家族制を存して一等親、二等親、三等親の別を立てたのだが、この三等親は即ち権妻ごんさいである。
現代の婦人に告ぐ (新字新仮名) / 大隈重信(著)
と云いながらスラリッとふすまを開けると蟠作に続いて出ましたのがお村、只今で云う権妻ごんさいです。お妾姿で髪はに結い、帯をお太鼓にしめてお妾然として坐りました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼はその権妻ごんさいと云うことばが大嫌いで、日頃から私をつかまえては、『何しろいくら開化したと云った所で、まだ日本ではめかけと云うものが公然と幅をかせているのだから。』
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この間舌長したながさんがうめいことをいッたぜ。今の時代は道楽時代という時代だとヨ。女といちゃつきたい時は西洋風を持ち出すし。権妻ごんさいを置きたい時には昔風を持ちだすし。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
旦那の友だちは皆、当時流行の猟虎らっこの帽子をかぶり、ぶりのよい官員や実業家と肩をならべて、権妻ごんさいでもたくわえることを男の見栄みえのように競い合う人たちだからであった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
淫鄙な権妻ごんさい狡獪かうくわい髪結かみゆひ等いづれも生々いきいきとした新しい興味を以て写し出されてゐる。
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
当時の成上りの田舎侍どもが郷里の糟糠そうこうの妻を忘れた新らしい婢妾ひしょう権妻ごんさいと称されて紳士の一資格となり、権妻を度々取換えれば取換えるほど人にうらやまれもしたし自らも誇りとした。
その官員さんの囲いもの——そのころは権妻ごんさいということばが流行っておりました。——になって、この番衆町に地面や家を買ってもらって、旦那様はときどきに忍んで来たというわけでございました。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「頑固だな。権妻ごんさいでもあるのか」
仇討禁止令 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
佐兵衛さんは旦那だんなで、勝川お蝶は権妻ごんさい上り、関取××は出入りの角力、そして佐兵衛さんはさしもの大資産おおしんだいってしまってもお蝶さんと離れず
殿様の方にはお召使が幾人いくたりもあって、何か月に六斎ろくさいずつかわる/″\お勤めがあるなどという権妻ごんさい置散おきちらかして居ながら、家来が不義を致しますと手打にいたさんければならんとは
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
万一血統をやしてはと云う心配もなくはないので、せめて権妻ごんさいでも置いたらどうだとすすめた向きもあったそうですが、元よりそんな忠告などに耳を借すような三浦ではありません。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
貴方の傍へ置いて権妻ごんさいと云っても奥様と云ったっても決して恥かしくございませんね
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
野沢屋の主人あるじの囲い者で、栄華をきわめ贅沢ぜいたくをしつくしていた、お蝶さんという権妻ごんさいのひっかかりだったのだが、そんな縁引えんびきがありながら、盲目のこととて、新入門の弟子の体にさわって見たらば
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
なに僕がこの娘を受出して権妻ごんさいにしようてえ訳じゃアねえが、あの娘のおとっさんには、昔風流の道で別懇にして御恩を受けたこともあるし、親戚みより頼りもねえという事だから、あのを身請して
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
よい衆の旦那、御内儀、権妻ごんさい——いき好みの、琴はどうも野暮くさいといった人が、これはいいと集まった。明治に生れた楽器である。八雲琴がもとで、竹琴ちっきん、一絃琴などが参酌されたものと思われる。
あれは何処どこかの権妻ごんさいだかおくさんだか知れんが、人柄ひとがら別嬪べつぴんだのう。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
又「そう何もかも手前てめえぎ附けられてはむを得ん、実は死人しびとだて、ついては手前てまに金子二拾両るが、何卒どうぞ此の事を口外してくれるな、打明けて話をするが、此の死骸は実は僕が権妻ごんさい同様のものだ」
只今の権妻ごんさいは極く勉強でございます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)