こり)” の例文
『まだ、御子息の郡右衛門様の分が、五十こりもありますので、手前共の店の土間と土蔵に、今夜一晩は積んで置くつもりでございます』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
背にかついでる大きなこりの中には、あらゆる物がはいっていた、香料品、紙類、糖菓類、ハンケチ、襟巻えりまき履物はきもの罐詰かんづめこよみ小唄こうた集、薬品など。
私は、新聞配達しているとき、新聞社から貰った印絆纏が、こりに入れてあるのを想いだしたのである。地下足袋も股引も、新聞配達には付き物であった。
泡盛物語 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
運河から荷を揚げて倉庫へ運ぶ人夫になつた。重いこりを肩にしてうつむき加減にはこんでゐる仙吉の目の下に大きな手がその日の給料をのせてさし出された。
反逆の呂律 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
ナイオ・マーシュの羊毛のこり、ニコラス・ブレイコの雪だるま(これはセクストン・ブレイクにもあり、私も「盲獣」などで使っている。他にも例は多い)
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
十七世紀のサン・シモン公の回想録には、エストレー伯爵という愛書狂が全く読まぬ書物を五万二千冊、それも釘づけのこりに入れて所有していたと書いてある。
愛書癖 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
四国なまりじゃったら舟の中に、一こりや二こり爆薬ハッパは請合います。松魚かつおの荷に作ってあるかも知れませんが、あの乾物屋さんに宛てた送り状なら税関でも大ビラでしょう。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そしてその大部分はすでに発送されたあとらしく、いくこりかの荷が小ぢんまりと一ところに積んであり、がらんとなった部屋々々は掃除までがきれいに行きとどいていた。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
この車は横街より出でたる、同じ樣にこり載せる車と共に去りぬ。ナポリにや行くらん。フイレンチエにや行くらん。耶蘇更生祭の來ん日まで、羅馬は五週間の長眠をなさんとするなり。
西尾小左衛門は、部下を連れて、荷駄方から木綿の荷を受け取り、こりを解いて、四、五十たんの布を、信長のわきへ積みかさねた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところがある晩、彼は酒場から出て、町はずれの街道で、数歩前のところに、例のこりを背負ってるゴットフリート叔父おじのおかしな影を見つけた。
何やら蒲団ふとん包みにした荷物や、むしろぐるみにしたこりなどを三、四箇ほど、すぐうしろまでにない上げて来たのを見ると
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
香料こうりょう、紙類、砂糖菓子さとうがし、ハンケチ、襟巻えりまき履物はきもの缶詰かんづめこよみ、小唄集、薬類など、いろんなもののはいってる大きなこり背負せおって、村から村へとわたあるいていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
なおまた、八の吉字にちなんで、米八石、絹八匹、檀紙だんし八束、薬八袋、白布八反、うるしおけ綿わたこり、砂金八両。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜中よなか起上おきあがって、戸の下にかぎをおき、こりをかついで出ていってしまうのだった。そして幾月いくつき姿すがたを見せなかった。それからまたもどってきた。夕方ゆうがた、誰かが戸にさわるおとがする。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
ゴットフリートはこりをまた肩にかつぎ、黙って歩きだした。身振りをし大声にしゃべりたててるクリストフと、せきをしながら黙ってるゴットフリートとは、相並んで帰りかけた。
なにげなく足をとめて、ここまでの旅、またこれからの道のりなどを考えていた楊志が、ふと気づくと、しゃ執事以下、十一こり強力ごうりきやほかの兵も一つの峰の背へ取ッつくやいな
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寿亭侯じゅていこうの印と共に、くらの内にかけておき、なお庫内いっぱいにある珠玉金銀のはこ襴綾種々らんりょうくさぐさ緞匹だんひつこり、山をなす名什宝器めいじゅうほうきなど、すべての品々には、いちいち目録を添えてのこし
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜中に起き上がって、戸の下に鍵を置き、こりをかついで出かけてしまった。いく月もつづいて姿を見せなかった。それからまたもどって来た。夕方、だれかが戸にさわる音がした。扉が少し開いた。
庭にも送るばかりになっている長持棹ながもちざおだの、こりだのが、むしろの上に山と積んである。ぜいこらした燈籠とうろうや庭木にも、藁塵わらごみがたかっていた。もう去りゆく家の寂しさが雑然とただよっているのである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こりをおろしてからも、しばらくは口をきくことができなかった。しかし彼がやって来る時はいつもそうであるのを見馴みなれていたし、また彼の息が短いことも知っていたので、だれも気にかけなかった。
仮装かそうの隊商十一こり青面獣せいめんじゅうかしらとして、北京ほっけいを出立する事
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)