新芽しんめ)” の例文
セイゲン、ヤシオなど云う血紅色けっこうしょく紅褐色こうかっしょくの春モミジはもとより、もみじかえでならけやき、ソロなどの新芽しんめは、とり/″\に花より美しい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
つぎの年、もみの木は新芽しんめひとつだけはっきりのび、そのつぎの年には、つづいてまた芽ひとつだけ大きくなりました。
新芽しんめは、いきいきともえでて、鳥はたのしそうにさえずっていました。けれども、ニールスの心はしずんでいました。
さそひに來たガラツ八の八五郎をからかひ乍ら相變らず植木の新芽しんめをいつくしむ錢形の平次だつたのです。
同じ時刻じこくに同じ場所を動いているのだが、よく見ると顔ぶれの幾人いくにんかがかわり、そのせいでか、みんなの表情もあたりの木々の新芽しんめのように新鮮しんせんなのに気がつく。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
代助は縁側へ出て、にはからさきにはびこる一面の青いものを見た。花はいつしか散つて、今は新芽しんめ若葉わかばの初期である。はなやかなみどりがぱつとかほに吹き付けた様な心持ちがした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「おかあさん、山吹やまぶきから、あんなに新芽しんめましたよ。」と、勇二ゆうじは、ははげました。
親木と若木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ごらんよ、水寨すいさいの辺を。柳はみどりの新芽しんめを吹き、杏花あんずや桃も笑いかけてる」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まゝたるのおぬひが此瀬このせちてくは道理だうりなり、ものへばにらまれ、わらへばおこられ、かせればざかしとひ、ひかえにあればどんかられる、二新芽しんめ雪霜ゆきしものふりかゝりて
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
よく湿しめる萱屋は低し新芽しんめふく一本いつぽん茱萸ぐみ銀鼠ぎんねずの雨
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ゆさ/\とやわらかなえそうな若葉をかぶった白樫しらかし瑞枝みずえ、杉は灰緑かいりょく海藻かいそうめいた新芽しんめ簇立むらだて、赤松あかまつあか黒松くろまつは白っぽい小蝋燭ころうそくの様な心芽しんめをつい/\と枝の梢毎うらごとに立て
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
禿げた樹木じゆもくの梢がそろつて新芽しんめを吹く
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)