じき)” の例文
門野かどのつまらなくなつたから、自分の玄関わきの三畳じきへ引き取つた。障けて這入らうとすると、又縁側へ呼びかへされた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とぶっきらぼうの私も雪江さんだけには言いつけぬお世辞も不覚つい出て、机の上の毛糸のランプじきそっとランプを載せると
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
わたくしいそいでいわからりてそこへってると、あんたがわず巌山いわやまそこに八じょうじきほどの洞窟どうくつ天然てんねん自然しぜん出来できり、そして其所そこには御神体ごしんたいをはじめ
殊更ことさら岸に立って渡船を待つ心は、丁度表通に立派なアスファルトじきの道路あるにかかわらず、好んで横町や路地の間道かんどうを抜けて見る面白さとやや似たものであろう。
やはり、甲館こうかんほりのうちで、躑躅つつじさき殿でんのうちの桜雲台おううんだいじょうじき広間ひろまの東につづいてってある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だだ広い其の母屋のうちの広座敷の、古畳の寄せ集めじき、隙間もあれば凸凹たかひくもあり、下手の板戸は立附が悪くなって二寸も裾があき、頭があき、上手のふすまは引手がけて
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
次の日六兵衛は、生まれてから一度も手を通したことのない礼服れいふくをきせられ、お城に参上さんじょうしました。百じょうじきもある大広間には、たくさんの家来けらいがきら星のようにずらりと居流いながれています。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
おやと、燕作がびっくりしているに、さらに、二じょうじきほどな床板ゆかいたをはねあげると、えんの下は四角な井戸のように掘り下げられてあった。顔をだすと、つめたい風がふきあげてくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自由に車を通ずるにかゝはらず、殊更ことさら岸に立つて渡船わたしぶねを待つ心は、丁度ちやうど表通おもてどほりに立派なアスフワルトじきの道路あるにかゝはらず、好んで横町や路地の間道かんだうを抜けて見る面白さとやゝ似たものであらう。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
災後、新に開かれたセメントじき大道だいどうは、黒亀橋から冬木町ふゆきちょうを貫き、仙台堀に沿うて走る福砂通ふくさどおりと称するもの。また清洲橋から東に向い、小名木川と並行して中川を渡る清砂通きよさどおりと称するもの。
深川の散歩 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
方々かたがた、方々、曲者くせものはこの部屋へやでござる。千じょうじきを取りまきめされい!」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)