とし)” の例文
「まあ、なんて、気味きみのわるいいぬでしょう。」と、女中じょちゅうがいって、みずをかけようとしたのをとしちゃんは、やめさせました。そして
母犬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
としと云う女があって、それが新蔵とは一年越互に思い合っていたのですが、どうしたわけか去年の暮に叔母の病気を見舞いに行ったぎり、音沙汰もなくなってしまったのです。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
気がついてみるとおとしはしくしく泣いています。私も思わず涙が出て来ました。何と云ってよいか分りません。それに、あなたといったような調子が、どうもうまくゆきません。
子を奪う (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
清ちやんととしちやんがまだ一所懸命に「ヤアヤア」と掛声をしながら戦つてゐましたが、どうしたはづみか、清ちやんが握つてふりまはしてゐた槍がポカンと、秀ちやんの頭を打つてしまひました。
泣き笑ひ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
としやでございますか? あれは十八になりますが……」
白妖 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
くるとしちゃんは、学校がっこうへいくと、やすみの時間じかんに、運動場うんどうじょう砂場すなばで、小山こやまといっしょに砂鉄さてつるのに夢中むちゅうになっていました。
白い雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「知っているとも。あれが君、おとしなんだ。」と、興奮した声で答えたそうです。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
なるほど、へびというようなおそろしいものが、やぶのなかんでいることにがつかなかったと、としちゃんは後悔こうかいをしました。
もののいえないもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
みんなは、なにかすてきに、おもしろいことがないかと、おもっているのです。としちゃんも、もとより、その一人ひとりでありました。
白い雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あ、わかった! このあいだのパンも、自分じぶんがたべずに、小犬こいぬのところへっていったのだ。」と、としちゃんはりました。
母犬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このとき、としちゃんは、一人ひとりだけ、まどそとで、つばめが自由じゆうに、あおそらびまわっているのを、じっと見守みまもってかんがえていたのであります。
白い雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今日きょうあそびにいくと、ちょうどおばさんはるすでした。としちゃんが、あちらにねむっているくろねこをよんでも、ふりかないのであります。
もののいえないもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
はなしというのは、ただこれだけです。けれど、としちゃんにはそのはなしがなんでもなくなかったのは、つい二日ふつかまえのことでした。
もののいえないもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ボールがはいったから、こちらへげておくれ。」と、としちゃんが、いいました。もんうちから、なんの返答へんとうもありません。
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「よし、いいたますよ。」と、こんどは、ゆうちゃんのつよしたボールは、としちゃんのグラブのなかに、ボーンといって、うまくおさまりました。
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるとしちゃんは、学校がっこうからかえりに、このいぬが、やはりなにかくわえて、わきめもふらずにはらっぱをかけて、あちらのすぎばやしなかへゆくのをました。
母犬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゆうちゃん、しっかりおげよ。」と、としちゃんは、ポン、ポンとグラブをたたいていました。
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)