掛合かけあい)” の例文
此方こっちから斯う云う事を諸外国の公使に掛合かけあい付けると、彼方あっちから斯う返答して来たと云う次第、すなわち外交秘密があきらかわかって居なければならぬはず
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
馬方うまかた牛方うしかた、人足の世話から、道路の修繕、助郷すけごう掛合かけあいまで、街道一切のめんどうを見て来たその心づかいは言葉にも尽くせないものがあった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その晩のきりが『花競八才子はなくらべはっさいし』という題で、硯友社の幹部の面々が町奴まちやっこ伊達姿だてすがたで舞台に列んで自作の「つらね」を掛合かけあいに渡すという趣向であった。
迷亭と独仙が妙な掛合かけあいをのべつにやっていると、主人は寒月東風二君を相手にしてしきりに文明の不平を述べている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なにしろ舞台がこんな所で、ふくろの鳴き声や狸囃子たぬきばやし鳴物なりものじゃあ、しんみりしたお芝居にゃあなりませんけれど、漫才の掛合かけあいだと思えばいいでしょう。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まだ乳房ちぶさにすがってる赤子あかごを「きょうよりは手放して以後親子の縁はなきものにせい」という厳敷きびしき掛合かけあいがあって涙ながらにお請をなさってからは今の通り
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
文治が友之助を助けた翌日、お村の母親の所へ掛合かけあいに参りまして、帰りがけに大喧嘩の出来る、一人の相手は神田かんだ豊島町としまちょうの左官の亥太郎いたろうと申す者でございます。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
翌日大臣相馬人を伴れて掛合かけあいに来ると、瓦師馬の教えのままに答えたから評定すると、諸臣一同この瓦師は大力あるらしいから足で牽かせたら莫大ばくだいの金を取るだろう
チャンとすましてもらしと無慈悲の借金取めが朝に晩にの掛合かけあい、返答も力男松おまつを離れし姫蔦ひめづたの、こうも世の風になぶらるゝものかとうつむきて、横眼に交張まぜばりの、袋戸ふくろど広重ひろしげが絵見ながら
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
明後日は会社の臨時総会にて残念ながら半輪亭はんりんていのけいこ休みと致候。ただし当月中には是非とも「口舌八景」上げたきつもり貴処もせいぜい御勉強のほど願はしくお花半七掛合かけあい今より楽しみに致をり候
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
『お玉さん樋口さん』の掛合かけあいまで聞かされたものだから、かあいそうに、ばあさんすっかりもてあましてしまって、樋口のいない留守に鸚鵡を逃がしたもんだ、窪田君、あの滑稽こっけいを覚えているかえ。
あの時分 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
掛合かけあいの詞があれを誘い出します。呼び出します。
塾中に雄弁滔々とうとう喋舌しゃべって誠に剛情なシツコイ男がある、田中発太郎たなかはつたろう(今は新吾しんごと改名して加賀金沢に居る)と云う、是れが応接掛おうせつがかり、それから私が掛合かけあい手紙の原案者で
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
清「その又作が火葬にして沼の中へ放り込んだ白骨を捜し出すか、出る所へ出るか、二つに一つの掛合かけあいに来たのに、腹を切ってわっちに頼むと云うのは一体どういう頼みですえ」
宗助は叔母の仕打に、これと云う目立った阿漕あこぎなところも見えないので、心のうちでは少なからず困ったが、小六の将来について一口の掛合かけあいもせずに帰るのはいかにも馬鹿馬鹿しい気がした。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
余はゆか囃子はやし連弾つれびき掛合かけあいの如き合方あいかたを最も好むものなり。『鬼一法眼きいちほうげん菊畑きくばたけの場にて奴虎蔵やっことらぞう奥庭おくにわに忍び入らんとして身がまへしつつ進み行くあたりのゆかの三絃を聴かば誰かチョボを無用なりとせん。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
角「そうけえ、おらア今金はあるが、千鳥村へ田地でんじ掛合かけあいに来たんだから、田地が売買うりけえにならなければけえりに直ぐ買ってくから、何しろ手附を置いて往くから、馬を置いて下せえ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さて本所松倉町なる小野庄左衞門の浪宅へ、大伴蟠龍軒おおともばんりゅうけんと申しまする一刀流の剣術遣いの門弟和田原八十兵衞と、秋田穗庵という医者が参り、娘お町をくれろとの掛合かけあいになりましたが
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
山界やまざかいの争い事から其の浪人者が仲裁なかに入り、掛合かけあいに来ましたのをはずかしめて帰した事があります、其の争いに先方さき山主やまぬしが負けたので、礼も貰えぬ所から、それを遺恨に思いまして
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
山刀やまがたなして片手に鉄砲をげ、忍足しのびあしで来て破れ障子に手を掛けまして、そうっと明けて永禪和尚とお梅の居ります所の部屋へ参って、これから掛合かけあいに成りますところ、一寸一息つきまして。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)