拝謁はいえつ)” の例文
曳かれ、初めて陣中で家康公に拝謁はいえつした時、父の石舟斎は家康公の問に答え——柳生流は大乗の剣をもって本旨とするとお答えなされた
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは見ものだというので、子供も女も寄り集まって見に出た。使節の一行は幾台かの馬車をつらねてホテルから宮廷きゅうてい拝謁はいえつに出かけた。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
神にも拝謁はいえつのできぬものにはあらざるべしと決心し、これより種種しゅじゅの善行を志し、捨身すてみ決心して犬鳴山けんめいざんこも大行たいぎょうをはじめ
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
もし早く帝に拝謁はいえつすることがかなわないならすみやかに浪華なにわの地を退きたい、そして横浜にある居留民の保護に当たりたい一同の希望であると。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「こやつが、こんな荷をかつぎ込みまして、どうしても、御隠居に拝謁はいえつをと、いいはりますので——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
私はまだ拝謁はいえつをしませんが、昔は一般から見て今の天皇陛下以上に近づきがたい階級のものがたくさんおったのです。一国の領主に言葉を交えるのすら平民には大変な異例でしょう。
文芸と道徳 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「閣下、久しく拝謁はいえつを見ませんでしたが、相変らず御盛ごさかんなことで恐れ入りまする」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
それには、ただ今天皇陛下から拝謁はいえつ御沙汰ごさたがあって参内さんだいして来ましたばかりです。涙が流れて私は何も申し上げられませんでしたが、私に代って東大総長がみなお答えして下さいました。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
二年立って、正保元年の夏、又七郎は創がえて光尚に拝謁はいえつした。光尚は鉄砲十挺を預けて、「創が根治するように湯治がしたくばいたせ、また府外に別荘地をつかわすから、場所を望め」
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ちょうどその時刻ヴィルプール駐劄ちゅうさつの英国駐在官レジデントサー・ロバートソン・ジャルディンきょうは、国王に拝謁はいえつして退庁しようとしてたまたま王女のあでやかなお姿を、開け放したドアの向うに垣間見た。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
遠江とおとうみ(伊達宗利)さま、一ノ関(兵部宗勝)さま、岩沼(田村右京)さまが拝謁はいえつし、次に、式部(伊達宗倫むねとも)さま、左兵衛(伊達宗親)さま、弾正だんじょう(伊達宗敏)さま、肥前(伊達宗房)さま
拝謁はいえつを願い出たのであった。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「案じるな。劉使りゅうし君は、莫大な功労があるので、予と共に都へ上って、天子へ拝謁はいえつし、やがてまた、徐州へ帰って来るであろう」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで日本の使節もよいことを聞いた、小笠原流にもない礼法を学んだと喜び、いよいよ宮廷きゅうていに達し拝謁はいえつするとき、使節は玉座ぎょくざの前でみな手を鼻に当てた。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それから老中を呼んで、二人ふたりの言うことを聞こうとしたが、アメリカの軍艦がまたにわかに外海へ出たという再度の報知しらせを得たので、二人の老中も拝謁はいえつを請うには及ばないで引き退いた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「上人に拝謁はいえつ申しあげた上、折入って、御垂示をねがいたい望みでござるが、御都合のほどはいかがでござりましょうか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるいは実業家が拝謁はいえつを賜わりたりと聞き、おのれも実業家たらんと思うように、一時の現象に眩惑げんわくされて終身しゅうしんの方針を定むることは、必ず悪い結果をもたらすとは断言されぬが
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
範綱のりつなと、十八公麿まつまろとは、大柱の客間をもう一間ひとまこえて、東向きのいつも、拝謁はいえつする小間まで通って平伏していた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さらばと(中略)——御前絶えまもなく拝謁はいえつにぎはひけり。四日五日は近国の衆、或は城主、或は諸寺、諸社の僧官神人集まりつどひ、その様おびただし。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「じゃあ、今日は、わし一人で、ご拝謁はいえつをしてこよう。すぐに、戻ってくるからな」と、中へ隠れた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
公卿くげ常盤井ときわい殿へ伺候して拝謁はいえつを願い出たら、折しも十二月の中旬というのに、垢じみた衣冠いかんすらなく、夏のままな単衣ひとえ蚊帳かやを上にまとうて会ったということである。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同族五郎左衛門忠英ただひでの刃傷事件で、一門の蟄居ちっきょがつづき、それが解かれた今日でも、なお、公儀への拝謁はいえつはばかっている関係から、ふたりの婚儀ものびのびになっていた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
裾野すその和田呂宋兵衛わだるそんべえ。おそるおそるご拝謁はいえつを願いに、陣前へまかりこしております」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとまた、こんどは楊志のほうから、梁中書りょうちゅうしょ拝謁はいえつを願い出た。そしていうには
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを持って明日は、たつの口のお控え所まで参り、登城のおゆるしが出れば、即日、将軍家に拝謁はいえつすることになろう。——だから、老中のお使いが見え次第に、わしがお迎えに行かねばならぬ
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
河内守左衛門ノ少尉しょうじょうという一朝臣あそんの身は五位ノ官位にすぎず、単独で主上へ拝謁はいえつをねがい出るなどは、おこがましく、おそれ多いとも万々わかっていたが、やむにやまれぬ果てであったらしい。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もとより陪臣ばいしんなので、殿上にはのぼれない。階下に立って拝謁はいえつしたにとどまるが、帝も関羽の名はくご存じであるし、わけて御心のうちにある劉皇叔りゅうこうしゅくの義弟と聞かれて、特に御目をそそがれ
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さてこのたびのご拝謁はいえつに、なにがなよき土産みやげともぞんじまして、上洛じょうらくのとちゅう、いのちがけでさぐりえましたのは柴田勝家しばたかついえ攻略こうりゃく、まった北庄城ほくしょうじょうなわばり本丸ほんまる外廓そとぐるわほりのふかさにいたるまでのこと
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生ける時の殿に拝謁はいえつした気持を人々は思い出していた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「今、阿波守に拝謁はいえつしてきた」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「織田どのに拝謁はいえつしたい」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)