才子さいし)” の例文
このひとすぐれた才子さいしでありましたが形恰好なりかつこうすこへんで、せいたかかたて、見苦みぐるしかつたので、人々ひと/″\わらつてゐました。
その遺子宗虎丸が親の敵を討つといふ筋。大切おほぎりは『花競はなくらべ才子さいし』五人男に三人多いのが、銘々めい/\自作のツラネで文学上の気焔をかうといふ趣向。
硯友社と文士劇 (新字旧仮名) / 江見水蔭(著)
飯粒めしつぶらるゝ鮒男ふなをとこがヤレ才子さいしぢや怜悧者りこうものぢやとめそやされ、たまさかきた精神せいしんものあればかへつ木偶でくのあしらひせらるゝ事沙汰さたかぎりなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
というような現実曝露ばくろは決して見受けない。みな才子さいし佳人かじんである。但し親が町家か百姓で肩書のない場合には新聞社の方で然るべく計らってくれる。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
私は本多ほんだ子爵が、今でこそ交際嫌いで通っているが、その頃は洋行帰りの才子さいしとして、官界のみならず民間にも、しばしば声名をうたわれたと云う噂のはしも聞いていた。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
も少しはるとつたやうな多芸たげい才子さいしで、学課がくくわ中以上ちういじやう成績せいせきであつたのは、校中かうちう評判ひやうばんの少年でした、わたしは十四五の時分じぶんはなか/\のあばれ者で、課業くわげふの時間をげては運動場うんどうばへ出て
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
大事と思ふ心も何時しか忘れて小夜衣の顏を見ぬ夜は千しうおもひにて種々しゆ/″\樣々さま/″\と事にかこつけ晝夜のわかちもなく通ひける實に若き者のおぼれ安きは此道にして如何なる才子さいしも忽ち身をほろぼし家産かさん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
豪傑ごうけつ才子さいしを気取って、わざと礼儀作法を破るものがあれば、これすなわち自己と他人をあざむくものであるが、このあざむく心がなければ、たとえ自己の弱点を見られたところで、たいした恥にならぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
復一は、またしても、自分のこせこせしたトリックの多い才子さいしはだが、無駄むだなものにかえりみられた。この太い線一本で生きて行かれる女が現代にもあると思うとかえって彼女にモダニティーさえ感じた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
覺束おぼつかなしや才子さいし佳人かじんかがなべてよろこびののいつかべき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
立花君も満足のようだったが、そこは才子さいしだ。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)