手枕てまくら)” の例文
「あたいだッて、たましいはあらア、ね」吉弥は僕のひざに来て、その上に手枕てまくらをして、「あたいの一番好きな人」と、僕の顔を仰向けに見あげた。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
うちへ帰ると細君は奥の六畳に手枕てまくらをしたなりていた。健三はそのそばに散らばっている赤い片端きれはしだの物指ものさしだの針箱だのを見て、またかという顔をした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
木津屋の一間で、七兵衛は手枕てまくらで横になり、朋輩衆と嵐山の方へ行ったというお松の帰りを待っています。
ゴロリ手枕てまくらかべに貼った十七人の名前を見上げて、つぎの犠牲者とその襲撃法しゅうげきほうでも考えているところだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
にほひこぼるるやうにして彼はなみに漂ひし人の今打揚うちあげられたるもうつつならず、ほとほと力竭ちからつきて絶入たえいらんとするが如く、手枕てまくらに横顔を支へて、力無きまなこみはれり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
『おれなぞは、鬱々くさくさすれば、こうして酒をのんで、ごろりと手枕てまくらになれるから、まだ有難いが……』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うしろに置いた腰掛台の上に、一人は匍匐はらばいになって、ひじを張って長々と伸び、一人は横ざまに手枕てまくらして股引ももひき穿いた脚をかがめて、天窓あたまをくッつけ合って大工が寝そべって居る。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おい、栖方の光線、あいつなら落せるかい。」と高田は手枕てまくらのまま栖方の方を見て云った。一瞬どよめいていた座はしんと静まった。と、高田ははッと我に返って起きあがった。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
宗助そうすけ手枕てまくらをして、なにかんがへるともなく、たゞこのくらせま景色けしきながめてゐた。すると御米およねきよ臺所だいどころはたらおとが、自分じぶん關係くわんけいのないとなりひと活動くわつどうごとくにきこえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そして、すぐにゴロリと横になって、手枕てまくらをかいながら、生意気なまいきそうな鼻のあな宮内くないのほうにむけ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うしろいた腰掛臺こしかけだいうへに、一人ひとり匍匐はらばひになつて、ひぢつて長々なが/\び、一人ひとりよこざまに手枕てまくらして股引もゝひき穿いたあしかゞめて、天窓あたまをくツつけつて大工だいくそべつてる。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
どういう栖方せいほうの空想からか、突然、栖方は手枕てまくらをしてかじの方を向き返って云った。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
毎晩手枕てまくらの夢をむすんでいる。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
賛五郎はごろりと横になって、世に入れない欝々うつうつとした顔を、手枕てまくらにのせて眼を閉じた。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、云って、手枕てまくらで横に寝てしまった。
横になって、手枕てまくらをかいながら
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)