従兄妹いとこ)” の例文
旧字:從兄妹
叔父と母とがそんなことを言っているのを私は襖越ふすまごしで従兄妹いとこたちと陽気な話をしていながら耳にした。私のことを話しているので——。
地球儀 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
丈太郎とは従兄妹いとこ同志、生れ落ちるからの許嫁いいなずけで、二十歳はたちになったら一緒にと、親達の間で極められた二人の運命だったのです。
自分の国は田舎の方だものだから、大森の親類へ来ているので、あなたと従兄妹いとこ同士の間柄だと、ナオミさんは云っていました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
小田刑事はこの継母ふさの従兄妹いとこに当たるそうですから、継母に会って話した結果、ふさは絶対に富三を殺したのではなく
頭蓋骨の秘密 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
叔母には下枝しずえ、藤とて美しき二人の娘あり。我とは従兄妹いとこ同士にていずれも年紀としは我よりわかし。多くの腰元に斉眉かしずかれて、荒き風にも当らぬ花なり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
従兄妹いとこ同志ともつかぬ異様な間柄になっているのではないか……と疑えば疑い得る筋がないでもない位の事であった。
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「私はあなたが、中村さんと、親戚とか従兄妹いとこ同士とか、そんな風な関係かと思いました。余り親しそうだから。」
変な男 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
継子さんとは従兄妹いとこ同士で、ゆくゆくは結婚なさるという事をわたくしもかねて知っていたのでございます。
停車場の少女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「随分貴方は頑固なのネ。貴方と妾とは従兄妹いとこじゃありませんか。泊っていったって何ともないじゃないの」
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
とお延は正太に挨拶あいさつした。従兄妹いとこ同志の間ではあるが日頃正太のことを「兄さん、兄さん」と呼んでいた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すぐえたものを、今は、その反対で、冴えている時でも、昇の顔を見れば、すぐ顔を曇らして、冷淡になって、余り口数もきかず、総て仲のわるい従兄妹いとこ同士のように
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
またその上に大阪役者の中村芝雀しばじゃく(後に雀右衛門)を従兄妹いとこにもっていたので、東上のおりには、引幕をおくったり見連けんれんを催したりする、彼女の生活の色彩は、いよいよ華やかであった。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
源系げんけい義家の孫、義朝の従兄妹いとこにてさいつころから、大軍を糾合きゅうごうして、関東より攻めのぼるであろうと怖れられている頼朝、義経よしつねは、この十八公麿には、復従兄弟またいとこにあたるのでございます
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しかしお祖母さまには逆らえない、お祖母さまも松山から来た人だし、その娘と私とは従兄妹いとこに当る、——母があんなことになったうえに、三代も重縁というのは私は好ましくないんだ」
それでも時々は立て続けに、五六番老妻に勝ち越されると、むきになつて怒り出す事もあつた。家督を継いだ長男は、従兄妹いとこ同志の新妻と、廊下続きになつてゐる、手狭い離れに住んでゐた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
従兄妹いとここひし合つて、青木さんの境遇きやうぐうにすれば多少たせう早過はやすぎもしたのであつたが、たがひおもひつめた若々わか/\しい熱情ねつじやうのまゝにおもつて結婚生活けつこんせいくわつにはいつた二人は、まる三年かんたそのころになつて
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「だつて、あんた、従兄妹いとこ同士で、そんなことできると思つて?」
落葉日記 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「実はね親分、従兄妹いとこ同士だけれども、私の娘のお信と一緒にして、末長く見て貰うはずでしたよ。足は悪かったが、智恵のたくましい、良い男で——」
従兄妹いとこが一人ありゃ、俺は、こんな思いはしやしない!……よう、お蔦、そしてお前は当分どうするつもりだ。
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、小田さんは、従兄妹いとこに当たる富三の継母ままははの心中を思って、眼をうるおして答えられました。
頭蓋骨の秘密 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
水沢継子さんの阿兄おあにいさん——継子さんもそう云つてゐますし、わたくし共も矢はりさう云つてゐましたけれど、実はほんたうのあにさんではない、継子さんとは従兄妹いとこ同士で
「そのまちかねえという方、なんですの、女の方なのでしょ、どんな方、もちろん若い方でしょ、おきれいにちがいありませんわね、御親類とか従兄妹いとことか、貴方とどんな関係がおありですの」
百足ちがい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
家の生活で結び付けられた人々の、微妙な、陰影かげの多い、言うに言われぬ深い関係——そういうものが重苦しく彼の胸を圧して来た——叔父姪、従兄妹いとこ同志、義理ある姉と弟、義理ある兄と妹…… 
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
従兄妹いとこか」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お辰とは従兄妹いとこ同士で、知らない仲ではございませんが、一緒になったのは、先代に不意の事があって、一と月も経ってから始まった話でございます。
従兄妹いとこよりももっと濃い仲——○○○○の間柄——で夫婦になり、私を生んだのである。
犬神 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
遂にお通と謙三郎とが既に成立せる恋を破りて、おのれ犠牲いけにえを得たりしにもかかわらず、従兄妹いとこ同士が恋愛のいかに強きかを知れるより、嫉妬しっとのあまり、奸淫かんいんの念を節し、当初婚姻のよりして
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「また従兄妹いとこに当っております」
城中の霜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「お舟と和助も、従兄妹いとこ同士か何かだ。二人ずつ相談して口を合せたら、どんな嘘でも通るじゃないか」
私の父と母とは従兄妹いとこの間柄でしたから、私たちのような不具者の生れるのは医学上当然のことでありましょうけれど、やはり旅僧の祟りと思われる事情があったので御座います。
呪われの家 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
兄妹きょうだいのようか、従兄妹いとこのようか、それとも師弟のようか、主従しゅうじゅうのようか、小説のようか、伝奇のようか、そこは分りませんが、惚れているにゃ違いないのですから、私は、親、伯父、叔母、諸親類
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
従兄妹いとこ同士の夫婦が一組出来上がって、小永井の家は千秋万歳さ、——ところで、倅があの家の跡を
自分とは従兄妹いとこの間柄なる本妻の綾野あやのを嫌い、とうとう一年経たないうちに、柳橋やなぎばし芸者のお勝を、奉公人名義でめかけにいれ、それを鍾愛しょうあいするの余り、本妻の綾野を瘋狂ふうきょうと称して
忠弘には絹姫きぬひめという従兄妹いとこ同士の許婚いいなずげがあり、朝夕顔を合わせておりますが、絹姫の絵に描いたような端麗な美しさも、取済とりすましたお行儀のよさも、学問諸芸の並々ならぬたしなみも
「ヘエ——、遠い従兄妹いとこ同士ですが、来年の春は祝言することになっております」
お粂が自分から飛出せば、菊之助とお勇はちょうど良い配偶つれあいじゃないか。二人一緒になれば、従兄妹いとこ同士で越前屋が立てられる。勝造は娘の出世になることだから、自然遠のくだろう。
「お紋さんと従兄妹いとこ同士で、三十そこそこでございます、肌合の面白い方で」