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山深
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やまふか
峰は
木の
葉の
虹である、
谷は
錦の
淵である。……
信濃の
秋の
山深く、
霜に
冴えた
夕月の
色を、まあ、
何と
言はう。……
流は
銀鱗の
龍である。
木像、
神あるなり。
神なけれども
霊あつて
来り
憑る。
山深く、
里幽に、
堂宇廃頽して、
愈活けるが
如く
然る
也。
唯山深く
木を
樵る
賤が、
兎もすれば、
我が
伐木の
谺にあらぬ、
怪しく、
床しく
且つ
幽に、ころりん、から/\、と
妙なる
楽器を
奏づるが
如きを
聞く——
其時は、
森の
枝が
見参、
見参などゝ
元気づいて、
説明を
待つまでもない、
此の
山深く
岩魚のほかは、
予て
聞いた
姫鱒にておはすらむ、カバチエツポでがんせうの、と
横歩行きして
見に
立つ
勢ひ。
『へい、
否、
山深く
参つたのが、
近廻りへ
引上げて
来たでござります。』