つか)” の例文
旧字:
菊「そんならおぬしゃあ盗人と、知ってもやっぱり愛想もつかさず、」源「お前と一所に居たいのは、たとえにもいう似た者夫婦、」菊
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれども、天魔に魅入られたものと親父も愛相あいそつかして、ただ一人の娘を阿父さん彼自身より十歳とをばかりも老漢おやぢの高利貸にくれて了つたのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
殊に近頃になつて、所謂政界の名士達なるものと、お知己ちかづきになるに従つて、大抵の方には、殆ど愛想をつかしてしまひました。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
それに君も細君に苦労を掛けて、子まで有る身の上で、負債もかさんでられる事だから、日頃御懇意に致すに依って申すのだが、入らざる事を云うと君に愛想をつかされて立腹を受け
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この男木作りかとそしる者は肉団にくだん奴才どさい御釈迦様おしゃかさまが女房すて山籠やまごもりせられしは、耆婆きばさじなげ癩病らいびょう接吻くちづけくちびるポロリとおちしに愛想あいそつかしてならんなど疑う儕輩やからなるべし、あゝら尊し、尊し
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「なに、訳はない」と断わりながら、一旦詰め込んだ香水のびんを取り出して、封被ふうひいで、栓を抜いて、鼻に当てていでみた。門野は少し愛想をつかした様な具合で、自分の部屋へ引取った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ことに近頃になって、所謂いわゆる政界の名士達なるものと、お知己ちかづきになるに従って、大抵の方には、ほとんど愛想をつかしてしまいました。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
貴方が余所外よそほかに未だ何百人愛してゐらつしやるかたが有りませうとも、それで愛相あいそつかして、貴方の事を思切るやうな、私そんな浮気な了簡りようけんではないのです。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
活きるか死ぬかというこれが情婦いろだったって、それじゃ愛想をつかしましょう、おまけにこれがく先は、どこだって目上の親方ばかりでさ、大概てえげえ神妙しんびょうにしていたって
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「なに、わけはない」と断わりながら、一旦め込んだ香水のびんして、封被ふうひいで、せんいて、はなてゝいで見た。門野はすこし愛想をつかした様な具合で、自分の部屋へ引き取つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一旦いったんは何、私だって、先刻さっきのように云ったけれど、お前さんの心配をすることだもの、それに、どうせ、こんなからだだから、お前さんさえ愛想をおつかしでないことなら
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それは如何いかにお可愛かはいいのか存じませんけれど、一旦愛相あいそつかしてげて行つた女を、いつまでも思込んで遅々ぐづぐづしてゐらつしやるとは、まあ何たる不見識な事でせう! 貴方はそれでも男子ですか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)