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宛行
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あてが
ふりがな文庫
“
宛行
(
あてが
)” の例文
幾度
(
いくたび
)
饑
(
う
)
え、幾度殺されそうにしたか解らないこの
死
(
し
)
に
損
(
そこな
)
いの畜生にも、人が来て頭を
撫
(
な
)
でて、
加
(
おまけ
)
に、
食物
(
くいもの
)
までも
宛行
(
あてが
)
われるような日が来た。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
無斷で
宛行
(
あてが
)
つても喜ぶことゝ思ひの外、祝言の盃の間際を脱け出して、山の上の荒れた庵室に旅畫師をたよつたのであつた。
ごりがん
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
好んで欧米の人に
購
(
あがな
)
われました。
欅
(
けやき
)
を表板にしこれに
漆
(
うるし
)
を施し、いわゆる「
蝋色
(
ろいろ
)
」に磨き出します。そうして鉄金具を四隅や錠前などに、たっぷりと
宛行
(
あてが
)
います。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
車夫は起ち悩める酔客を
扶
(
たす
)
けて、
履物
(
はきもの
)
を拾ひ、
鞭
(
むち
)
を拾ひて
宛行
(
あてが
)
へば、主人は帽を清め、ブックを取上げて彼に返し、頭巾を車夫に与へて、
懇
(
ねんごろ
)
に
外套
(
がいとう
)
、
袴
(
はかま
)
の泥を払はしめぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
名人の家に數代
宛行
(
あてが
)
ふ所の扶持米を算用したらば、非常に高價なるものならんと雖ども、封建の諸侯は其會計變則にして、入を計らずして出を爲す者なれば、之を厭はざりしことならん。
帝室論
(旧字旧仮名)
/
福沢諭吉
(著)
▼ もっと見る
と私は餘計なことながら、
郷里
(
くに
)
の方で母などが造つて居たのを思出して、母は小皿にちぎつた餅を
宛行
(
あてが
)
つてその上で延ばすといふ話をしました。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「なア坊んち、さうだつせ。……お父つあんの嫁はんもえゝが、わたへは坊んちみたいな人に、若い綺麗な嫁はん
宛行
(
あてが
)
うて、雛はんが
飯事
(
まゝごと
)
するやうなんを見るのが好きや。なア坊んち。……」
父の婚礼
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
三吉は何か思い当ることが有るかして、すこし
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
めた。
流許
(
ながしもと
)
の方から塩水を造って持って来て、それを妻に
宛行
(
あてが
)
った。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
先生は鼻眼鏡を
隆
(
たか
)
い鼻のところに
宛行
(
あてが
)
って、過ぎ去った自分の生活の
香気
(
におい
)
を
嗅
(
か
)
ぐようにその古い洋書を繰りひろげて見て、それから高瀬にくれた。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
こんなことを言って、細く
瘠
(
や
)
せた左の手で
肉叉
(
ホオク
)
や
匙
(
さじ
)
を持添えながら食った。宗蔵は
箸
(
はし
)
が持てなかった。で、こういうものを買って
宛行
(
あてが
)
われている。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
幾度か
庖丁
(
ほうちょう
)
を
宛行
(
あてが
)
って、当惑したという顔付で、
終
(
しまい
)
には口を「ホウ、ホウ」言わせた。復た、お仙は庖丁を取直した。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
と言いながら自分の鼻の
側
(
そば
)
へ人差指を
宛行
(
あてが
)
って見せた。さもさもあんな客を泊めたことを口惜しく思うかのように。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
独りで東京の留守宅を引受けるほどのお婆さんは、六畳の茶の間を勉強部屋として捨吉に
宛行
(
あてが
)
うほどのお婆さんは、
最早
(
もはや
)
捨吉を子供扱いにはしなかった。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
滑
(
なめら
)
かな石の上に折重ねて小さな
槌
(
つち
)
でコンコン
叩
(
たた
)
いてくれたりした、その白い新鮮な感じのする足袋の
綴
(
と
)
じ紙を引き切って、甲高な、
不恰好
(
ぶかっこう
)
な足に
宛行
(
あてが
)
って見た。
足袋
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「祖母さん、この
長火鉢
(
ながひばち
)
の置いてあるところをあなたの部屋としましょう。今に
久米
(
くめ
)
さんも来てくれましょうから、あの人には隣の部屋の方を
宛行
(
あてが
)
いましょう」
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
こうした雨具一枚節子に買って
宛行
(
あてが
)
うにも、岸本は四方八方へ気兼ねをしなければ成らなかった。彼が節子を保護しようとする心もとかく思うに任せなかった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
とお雪は
懐
(
ふところ
)
をひろげて、暗い色の乳首を子供の口へ
宛行
(
あてが
)
った。お延は車宿を指して走って行った。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ところが其朝に限つて、兄の方には新しい鞄や、帽子や、其他學校用のものが買つて
宛行
(
あてが
)
はれてあるに引きかへ、弟のためには子供持の雨傘と、麻裏草履としか有りません。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「まだ、君、毎日
浣腸
(
かんちょう
)
してますよ。そうしなけりゃ通じが無い……
玩具
(
おもちゃ
)
でも
宛行
(
あてが
)
って置こうものなら、半日でも黙って寝ています。房ちゃん達から見ると、ずっとこの児は弱い」
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
猫を飼つて鼠を捕らせるよりか、自然に任せて養つてやるのが慈悲だ。なあに、
食物
(
くひもの
)
さへ
宛行
(
あてが
)
つて
遣
(
や
)
れば、
其様
(
そんな
)
に
悪戯
(
いたづら
)
する動物ぢや無い。
吾寺
(
うち
)
の鼠は
温順
(
おとな
)
しいから御覧なさいツて。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
漸
(
ようや
)
く、私の待っていたような日が来た。番頭の幸作も養子分に引直して、今では家のもの同様である。それに嫁まで取って
宛行
(
あてが
)
ってある。私も、留守を預けて置いて、
発
(
た
)
つことが出来る。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
自分で自分の小さな生涯を開拓するために初めての仕事を
宛行
(
あてが
)
われに訪ねて行く捨吉の身に取っては、
涯
(
はて
)
しも無く広々とした世の中の方へ出て行こうとするその最初の日のようでもあった。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
花の型のある紙を
切地
(
きれぢ
)
に
宛行
(
あてが
)
ったり、その上から
白粉
(
おしろい
)
を塗ったりして置いて、それに添うて薄紫色のすが糸を運んでいた
光景
(
さま
)
が、唯
涙脆
(
なみだもろ
)
かったような人だけに、余計可哀そうに思われて来た。
刺繍
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私は未だに斯の人が當時
流行
(
はや
)
つた
獵虎
(
らつこ
)
の帽子を冠つた紳士らしい風采を覺えて居ます。それから觀兵式の日に連れられて行つて、初めて樽柿といふものを買つて
宛行
(
あてが
)
はれたことなどを覺えて居ます。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
宛
常用漢字
中学
部首:⼧
8画
行
常用漢字
小2
部首:⾏
6画
“宛”で始まる語句
宛
宛然
宛名
宛城
宛嵌
宛転
宛字
宛如
宛子
宛子城