孑孑ぼうふら)” の例文
ふらふら孑孑ぼうふらのようだわね……あれから、上へ上へと見霽みはらしの丘になって、段々なぞえに上る処……ちょうどここと同じくらいな高さの処に
石油は強い殺虫剤です。下水やどぶへ流しておくと孑孑ぼうふらが死にますから蚊が発生しません。稲の害虫をムラという悪い石油で殺す事もあります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
孑孑ぼうふらでない限りはね。ところで伯爵で居たかったら、そこに住まなければならないのだよ。と云うのは現在の生活が、その泥沼の生活だからさ
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
東風こち すみれ ちょう あぶ 蜂 孑孑ぼうふら 蝸牛かたつむり 水馬みずすまし 豉虫まいまいむし 蜘子くものこ のみ  撫子なでしこ 扇 燈籠とうろう 草花 火鉢 炬燵こたつ 足袋たび 冬のはえ 埋火うずみび
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
なにどうせ幾度も汲みにくんで、うちの姐さんは清潔家きれいずきでもってかめの水を日に三度ずつも替えねえと孑孑ぼうふらが湧くなんてえ位で
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
(僕はそこへ金魚にやる孑孑ぼうふらすくひに行つたことをきのふのやうに覚えてゐる。)しかし「御維新ごゐしん」以前には溝よりも堀に近かつたのであらう。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「ふざけるなッ極悪人め。飲みたければ、てめえにはあとで、どぶ孑孑ぼうふらでも飲ましてやるから静かにしていろ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かん前の火夫や石炭庫のコロッパスは、デッキまで孑孑ぼうふらのように、その頭を上げに来た。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
孑孑ぼうふらの巣のようになっている戸外の天水桶が、障子の海老の髭あたりに、まぶしいほどの水映みばえを、来るべき初夏の暑さを予告するかのように青々と写しているのが心ゆたかに眺められた。
俺は何うだ、繪具とテレビンとに氣を腐らして、年中ねんぢゆう齷齪あくせくしてゐる………それも立派な作品でも出來ればだが、ま、覺束おぼつかない。そりや孑孑ぼうふらどぶの中でうよ/\してゐるのよ、だが、俺は人間だ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
だから主人のこの命令は狡猾こうかつきょくでたのではない。つまり智慧ちえの足りないところからいた孑孑ぼうふらのようなものと思惟しいする。飯を食えば腹が張るにまっている。切れば血が出るに極っている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我思わがおもふまゝに孑孑ぼうふらうき沈み
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
もぐり沙魚の孑孑ぼうふらだ。——先方さきは女だ、娘だよ。可哀そうに、(口惜くやしいか、)と俺が聞いたら、(恥かしい、)と云って、ほろりとしたんだ、袖で顔を隠したよ。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
桶狭間おけはざまの時といい、先頃の長篠の折と申し、いずれも五月の頃で、しかも暑さは、今日どころではなく、さむらいどもは、腐り水であろうと、泥水どぶみずであろうと、孑孑ぼうふらすくって、そのまま
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あおくなれ蒼くなれ、やっこ、居酒屋のしたみをめやあがって何だその赤い顔は贅沢ぜいたくだい、おれ注連縄しめなわを張った町内、てめえのような孑孑ぼうふらかない筈だ、どこの流尻ながしじりから紛れ込みやあがった。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
孑孑ぼうふらうじほど多い武者修行に、いちいち礼儀をっていられないことは許してくれ。この柳生家で、それをやっていたら吾々は毎日、武者修行のために奉公していなければならないことになる。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人様ひとさま御迷惑。蚊柱のように唸るんでございますもの、そんな湯呑には孑孑ぼうふらが居ると不可いけません。お打棄うっちゃりなさいましよ。唯今、別のを汲替とりかえて差上げますから。」と片手をついて立構たちがまえす。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
水溜みずたまりの孑孑ぼうふらどもに用はない。宋江、みずから出て、勝負を決しろ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……柳町で悩まされた孑孑ぼうふらが酔いそうなものではなかった。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)