媒妁なこうど)” の例文
お冬はその後も和泉屋に奉公していまして、それから大和屋の媒妁なこうどで、和泉屋の娘分ということにして浅草の方へ縁付かせました。
半七捕物帳:03 勘平の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
殊にほかもん媒妁なこうどをするのと違って、此の名主が媒妁をするのだから、礼の一言ひとことも言わしなければならねえのに、何ういう訳でわりゃア拒むな
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其翌日男真面目まじめ媒妁なこうどを頼めば吉兵衛笑って牛のしりがい老人としよりの云う事どうじゃ/\と云さして、元よりその支度したく大方は出来たり、善は急いで今宵こよいにすべし
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
床にはハヤ良人おっとありて、新婦のきたるを待ちおれり。渠は名を近藤重隆と謂う陸軍の尉官いかんなり。式は別に謂わざるべし、媒妁なこうどの妻退き、介添の婦人おんな罷出まかんでつ。
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
聞けば全く媒妁なこうどの人に欺かれたのだというのに、わからねいなア、そのくせ清さんと仲がえいかというに決してそうでないようだに、おとよさんはえい人でかわいそうな人だ
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
第二百三十七 媒妁なこうど
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
というので、是から橋本幸三郎が媒妁なこうどで、小峯を桑原治平方へ世話をする事に決し、前橋竪町へ母お山もろともに縁付きました。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
女学校の教師をして、媒妁なこうどをいたしましたり……それよりか、拾人ひろいての無い、社会の遺失物おとしものを内へ入れます方が、同じ不都合でも、罪は浅かろうと存じまして。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おとよさんが隣に嫁入ったについては例の媒妁なこうどの虚偽に誤られた。おとよさんの里は中農以上の家であるに隣はほとんど小作人同様である。それに清六があまり怜悧りこうでなく丹精でもない。
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
わしが中へ入って二人共末長く夫婦にしてやりたい心得だから、うかたった一人のお娘子だが、友之助にやっては下さらんか、わし媒妁なこうどになります
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
矢野さんにお媒妁なこうどなすった事を聞きました口惜くやしさに——女は、何をするか私にも分りません——あなたが世の中で一番お嫌いだという青麟に、結納を済ませたんです。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貴方がおいでというので斯う遣って詰らん魚でも多分に取寄せて、ずお膳まで据えてお待受け申すのでござるからねえ、何うか媒妁なこうどの届かん所は幾重にもお指図を
「ですけどね、あの、ほかの世話はかまいませんけど、媒妁なこうどだけは、もう止してね。」
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうすれば思い合った二人が仲へわしが入り、媒妁なこうどとなって夫婦にして末永く添遂そいとげさせてやりたいから、と事を分けて話しました処が、紀の善も有難うございます
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そこを一つお考え直されて、とことばを残して帰った後で、アバ大人が媒妁なこうどではなおの事。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下谷稲荷町の美濃屋茂二作みのやもじさくと其の女房およし媒妁なこうど同様に周旋をしたということを聞出しましたから、早速お差紙さしがみをつけて、右の夫婦を呼出して白洲を開かれました。
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
作「わしもヤアぶち出しにくかったが、お前様めえさまが承知なら頼まれげえが有って有難ありがてえだ、うなればわしイ及ばずながら媒妁なこうどする了簡だ、それじゃア大丈夫だろうネ、仔細しせええね」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
藤野屋から来るなら山口屋の旦那様の媒妁なこうどが宜しいが、明樽買の岩田屋久八の娘にするのだから、山口屋の旦那じゃアいけません、少し過ぎますが、番頭さんがうちを持って
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わけえ同志で斯ういう訳になって、女子おなごを連れて己の家へ来て見れば、家もおさまらねえ訳で、是もさきの世に定まった縁だと思って、あんまやかましく云わねえで、己が媒妁なこうどをするから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
權「はい、わしもお蔭で喰うにゃア困らず、彼様あんな心懸のい女をかゝあにして、おまけに旦那様のお媒妁なこうどで本当はのお千代もいやだったろうが、仕方なしに私の嚊に成っているだアね」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
両人ふたりの主人と親に掛合い、世帯しょたいを持たせ、己が媒妁なこうどになって夫婦にした処、友之助も手前も働き、店が繁昌すると云うから目出たいと思い、蔭ながら悦んでいた処、母が留守になり
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
貴方の女房にして遣っては下さいませんか、此の橋本幸三郎がお媒妁なこうどを致しましょう
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と云うので、これから担ぎますから、久八、和平も手伝って担ぎましたから、たちまいえの見えないように炭を積み上げ、芽出度めでたく婚礼を済ませて、八右衞門は媒妁なこうどと共に別れて帰ります。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いやおっかさん、それは至極御尤もじゃが、此処にまア眞葛周玄先生という斯ういう立派な先生の媒妁なこうどがあって事をなさるし、わしも坊主の身の上だからの事は知らんが、不思議の事で
遅うおいでになって今になってわたくしは不服じゃなどとおっしゃっては媒妁なこうど立端たちばがござらんからねえ、斯うやって皆朋友の方も目出度いといって祝いに来て下すって、事がきまろうと申す所で
そこで女房を貰おうと思うが、媒妁なこうどが入って他家ほかから娘子あまっこを貰うというと、事が臆劫おっくうになっていかねえから、段々話い聞けば、あの男が死んでしまうと、わしは年が行かないで頼る処もない身の上だ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
といい付け、そうこうするうちに支度も整いましたから、酒肴さけさかなを座敷に取並べ、媒妁なこうどなり親なり兼帯けんたいにて、相川が四海浪静かにとうたい、三々九度の盃事さかずきごと、祝言の礼も果て、ずお開きと云う事になる。