婆様ばあさま)” の例文
旧字:婆樣
権七ごんしちや、ぬしづ、婆様ばあさまみせはしれ、旦那様だんなさま早速さつそくひとしますで、おあんじなさりませんやうに。ぬしはたらいてくれ、さあ、
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
女郎じょうろを買って銭が欲しい所から泥坊に成る者も有るからのう婆様ばあさま、と云われるたびに胸が痛くていっん出さないば宜かったと思ってなア
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おばこ居たかやと裏の小ん窓からのぞいて見たば(見たばは見たればの意)、コバエテ/\、おばこ居もせでのない婆様ばあさまなの(など)糸車、コバエテ/\。
春雪の出羽路の三日 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
高調子たかぢょうしに歌う。シュシュシュと轆轤ろくろわる、ピチピチと火花が出る。「アハハハもうかろう」と斧を振りかざして灯影ほかげを見る。「婆様ばあさまぎりか、ほかに誰もいないか」
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それにしても友達のMは何所どこに行ってしまったのだろうと思って、私は若者のそばに立ちながらあたりを見廻すと、遥かな砂山の所をお婆様ばあさまを助けながら駈け下りて来るのでした。
溺れかけた兄妹 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ところが案に相違して、その間に一孤島の如く、小僧は来ずして婆様ばあさまの来る区域が、広さはまだ精確にはわからぬが、ともかくもつい目の先に展開していることを知ったのである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
年が三つか四つ上であることはたいして並みはずれな夫婦ではないが、どうした理由でかその夫人をお婆様ばあさまと呼んで、大将は愛していなかった。どうかして別れたい、別に結婚がしたいと願っていた。
源氏物語:30 藤袴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
婆様ばあさま小用こようが出ないか。船に乗つてしまうと面倒だからな』
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
とかく、その年効としがいもなく、旅籠屋の式台口から、何んと、事も慇懃いんぎんに出迎えた、うちの隠居らしい切髪の婆様ばあさまをじろりと見て
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ばゝあは両人が駈出してから立ちつ居つ心配して泣いて騒いでも、七十を越した婆様ばあさまでございますから、只騒いで心配するばかり、何うする事も出来ません。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
カンテラの光りが風にあおられて磨ぎ手の右の頬をる。すすの上に朱を流したようだ。「あすは誰の番かな」とややありて髯が質問する。「あすは例の婆様ばあさまの番さ」と平気に答える。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
婆様ばあさまが波が荒くなって来るからかない方がよくはないかと仰有おっしゃったのですけれども、こんなにお天気はいいし、風はなしするから大丈夫だといって仰有ることを聞かずに出かけました。
溺れかけた兄妹 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
みぞれがぱら/\降出して来て、子供に婆様ばあさまで道は捗取はかどりません、とっぷり日は暮れる、するとしきりに痛くなりました。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
独鈷とっこの湯からは婆様ばあさま裸体はだかで飛出す——あははは、やれさてこれが反対あべこべなら、弘法様は嬉しかんべい。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
間違まちげえはなかろうけれども、わけえ者の噂にあんなハアうつくしい女子おなごがあるからうちけえるはいやだんべえ、婆様ばあさまの顔見るも太儀たいぎだろうなどという者もあるから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うちばかりじゃない、今でも盆にはそうだろうが、よその爺様じいさま婆様ばあさま、切籠持参は皆そうするんだっけ。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云う頼みの遺言をして死んだので、すると婆様ばあさまが又続いて看病疲れかして病気になり、その死ぬ前に何分頼むと言って死んだから、前に披露ひろめもしてあったので
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「はツはツ、婆様ばあさまうちぢや。」と老爺ぢゞい不意ふいわらけて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
母「はい有難う、又祝いの餅い呉れたって気の毒なのう、どうか婆様ばあさまア大事にして」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)