夫々それ/″\)” の例文
上野うへの戦争後せんそうご徳川様とくがはさま瓦解ぐわかい相成あひなりましたので、士族しぞくさんがたみな夫々それ/″\御商売ごしやうばいをお始めなすつたが、おれなさらぬからうまくはまゐりませぬ。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
でもまず差当さしあたり牛込と浅草とを目差して先ず牛込へ行き夫々それ/″\探りを入て置てすぐまた車で浅草へ引返しました、何うも汗水垢あせみずくに成て働きましたぜ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
然程さるほどに大岡越前守殿には段右衞門前名ぜんみやう畔倉重四郎一けんに付享保きやうほ十一年十二月みぎかゝり合の者共一どう白洲しらすよび出され夫々それ/″\に其罪科ざいくわを申渡されける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
風体ふうていによりて夫々それ/″\の身の上を推測おしはかるに、れいるがごとくなればこゝろはなはいそがはしけれど南無なむ大慈たいじ大悲たいひのこれほどなる消遣なぐさみのありとはおぼえず無縁むえん有縁うえんの物語を作りひとひそかにほゝゑまれたる事にそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
「個人には夫々それ/″\の自由意志と犯しがたい人格とがあります。」
青白き公園 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
また夫々それ/″\へ奉公すべし兩刀りやうたうたいする者は皆々天子てんしの家來なるぞ必ず忠臣二君に仕へずとの言葉ことばを用ゆるな浪人らうにんを致して居て越前の行末ゆくすゑかと後指うしろゆび
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
召捕らねば(谷)爾ですとも爾だから帰ったのです何でも未だ此府下に隠れて居ると思いますから貴方に願って各警察へ夫々それ/″\人相なども廻し其外の手配も仕て戴き度いので
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
明治八年九月四日午前一時頃我等別荘浅草区橋場町一丁目十三番地留守居の者共夫々それ/″\取締致し打伏し居り候処河岸船付桟橋より強盗忍び入りそろものと相見え裏口より雨戸を押開け面体めんていかくし抜刀を
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ふくみ居りしに斯る事出來せしかは其罪を幸ひに傳吉におはせしなるべし我又高田の家中に知る人多し金子の手當てあてして高田に到り夫々それ/″\役向やくむきへ金を遣ひ傳吉がとがならざるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
やがて余が其傷を洗いて夫々それ/″\の手術を施し終れば目科は厚く礼を述べ「いや是くらいの怪我で逃れたのはまだしもです。しかし此事は誰にも言わぬ様に願います」との注意をのこして退しりぞきたり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)