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圓髷
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まげ
褄前を
揃へて
裾を
踏みくゞむやうにして、
圓髷と
島田の
對丈に、
面影白く、ふツと
立つた、
兩個の
見も
知らぬ
婦人がある。
土手の
霞暮れんとして、
櫻あかるき
三めぐりあたり、
新しき
五大力の
舷の
高くすぐれたるに、
衣紋も
帶も
差向へる、
二人の
婦ありけり、
一人は
高尚に
圓髷ゆひ、
一人は
島田艷也。
いつも
來る
時は、
縞もののそろひで、おとなしづくりの
若い
男で、
女の
方が
年下の
癖に、
薄手の
圓髷でじみづくりの
下町好みでをさまつてゐるから、
姉女房に
見えるほどなのだが
いざ、
金銀の
扇、
立つて
舞ふよと
見れば、
圓髷の
婦、なよやかにすらりと
浮きて、
年下の
島田の
鬢のほつれを、
透彫の
櫛に、
掻撫でつ。
心憎し。
鐘の
音の
傳ふらく、
此の
船、
深川の
木場に
歸る。
衣紋を
細く、
圓髷を、おくれ
毛のまゝ、ブリキの
罐に
枕して、
緊乎と、
白井さんの
若い
母さんが
胸に
抱いた
幼兒が、
怯えたやうに、
海軍服でひよつくりと
起きると、ものを
熟と
視て、みつめて
ほつれた
圓髷に、
黄金の
平打の
簪を、
照々と
左插。