呪詛のろ)” の例文
呻く者、泣く者、喚く者、縛られたまま転げ廻る者、呪詛のろいの声を上げる者、……部屋の内はそれらの声で、阿鼻あび地獄を呈していた。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
果しなく猶予ためらっているのを見て、大方、それまでに話した様子で、後で呪詛のろわれるのを恐れるために、立て得ないんだと思ったらしい。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
故に女は男に比るにおろかにて、目前もくぜんなるしかるべきことをも知らず、又人の誹るべき事をも弁えず、我夫我子の災と成るべきことをも知らず、とがもなき人をうらみいか呪詛のろ
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
僕は飛んでもない呪詛のろいにかかっているのです。イイエ。虚構うそじゃありません。卒業論文なんかに呪詛のろわれて、神経衰弱にかかったんじゃありません。別にチャンとした原因があるのです。
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)
附添の数多あまたの男女は、あるいは怒り、あるいののしり、あるいは呆れ、あるいは呪詛のろった。が、狼狽ろうばいしたのは一様である。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
公子 ああ貴女は……呪詛のろわれた女ですぞ。(力強く)私は、そう申します、貴女は呪詛われた女だと。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
当の相手の無辜むこの女性の存在を死ぬほど呪詛のろい、憎悪にくしむものであるが、物わかりのよい……御主人の結局のためばかりを思っている久美子夫人は、彼女のこうした潔白な態度を非常に喜んだ。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
貴下あなた、慰めるにしても、気休めを言うにしても、何と云う、馬鹿な、可忌いまわしい、呪詛のろった事を云ったものでしょう。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
祝すか呪詛のろうか、それは今から誓うことは出来ぬなれど、貴女の憂いを増させるような、はしたない真似は致しませぬ、これだけは屹度お誓い申します。(と十字を切る)
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
(たとい、しばらくの辛抱でも。男を呪詛のろう気のないのは、お綾さんにも幸福しあわせです。そうしておおきなさいまし。)
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「歯形といい人面疽といい、恐ろしいことばかりが付きまとう。俺は呪詛のろわれた人間だ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
よくあるならひで——醫師いしやぬかり、看護婦かんごふ不深切ふしんせつなんでも病院びやうゐん越度をちどおもつて、それ口惜くやしさに、ものぐるはしくおほきたてものを呪詛のろつてるんだらう。……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
呪詛のろい悲しんでいるのではなく、否々いないなそれとは正反対に、喜び歌い、たたえ——すなわち何者かに帰依きえ信仰し、欣舞きんぶしているのだということが、間もなく知れたからであった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かんざしを取って授けつつ)楊弓ようきゅうを射るように——くぎを打って呪詛のろうのは、一念の届くのに、三月みつき五月いつつき、三ねん、五年、日と月とこよみを待たねばなりません。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女子 呪詛のろわれた神経が、私の呪詛われた神経が、そうだと私に告げている。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
情を知った貴婦人は、それから心着いて試みると、お綾に呪詛のろわれたものは、必ず無事ではないのがたしかで。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先刻も見れば、その森から出て参って、小児こどもたちに何か菓子ようのものを与えたが、何か、いつも日のうちから森の奥に潜みおって、夜ふけを待って呪詛のろうたかな。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あるいはあざけり、あるいはののしり、中にゃ独言ひとりごとを云うのも交って、人を憤り世を呪詛のろった声で、見ろ、見ろ、なんじ等、水源みなもとの秘密を解せず、灌漑かんがいの恩を謝せず、名を知らず
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
神職 退さがれ、棚村。かかる場合に、身らが、その名を聞き知っても、わざわいは幾分か、その呪詛のろわれた当人に及ぶと言う。聞くな。聞けば聞くほど、何が聞くほどの事もない。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
芋を石にする似非えせ大師、むか腹を立って、洗濯もの黒くなれと、真黒まっくろ呪詛のろって出た!……
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おもひのかなはぬ意趣返いしゆがへしに、なんと!みぎ横戀慕よこれんぼ盲人めくらに、呪詛のろはれたに相違さうゐありませぬ。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
呪詛のろわれたんだ、呪詛われたんだ。お妙さんに指を差して、お前たちは呪詛われたんだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ああ、罪の深い、呪詛のろうのも同一おんなじだ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)