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吾妻下駄
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あずまげた
ふりがな文庫
“
吾妻下駄
(
あずまげた
)” の例文
返事をきくと、お糸はそれですっかり安心したものの如くすたすた路地の
溝板
(
どぶいた
)
を
吾妻下駄
(
あずまげた
)
に踏みならし振返りもせずに行ってしまった。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
女は、しどろな言葉で
挨拶
(
あいさつ
)
して、来た時の勢いとは、くらべものにならないしょげかたで、どぶ板に、
吾妻下駄
(
あずまげた
)
の音を残して帰っていった。
旧聞日本橋:19 明治座今昔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
かの女は和装で
吾妻下駄
(
あずまげた
)
をからから桟橋に打ち鳴らしながら、まるで二三日の旅に親類へでも行くような安易さだった。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
廓
(
さと
)
に
馴
(
な
)
れた
吾妻下駄
(
あずまげた
)
、かろころ
左褄
(
ひだりづま
)
を取ったのを、そのままぞろりと青畳に敷いて、
起居
(
たちい
)
に
蹴出
(
けだ
)
しの水色
縮緬
(
ちりめん
)
。伊達巻で素足という芸者家の
女房
(
おんなあるじ
)
。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
吾妻下駄
(
あずまげた
)
と駒下駄の音が調子を
揃
(
そろ
)
えて
生温
(
なまぬる
)
く宵を刻んで
寛
(
ゆたか
)
なるなかに、話し声は聞える。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
夏の初、月色
街
(
ちまた
)
に満つる夜の十時ごろ、カラコロと鼻緒のゆるそうな
吾妻下駄
(
あずまげた
)
の音高く、
芝琴平社
(
しばこんぴらしゃ
)
の後のお濠ばたを十八ばかりの
少女
(
むすめ
)
、
赤坂
(
あかさか
)
の方から物案じそうに首をうなだれて来る。
二少女
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
本堂の中にと消えた若い芸者の姿は再び階段の下に現れて
仁王門
(
におうもん
)
の方へと、
素足
(
すあし
)
の指先に
突掛
(
つっか
)
けた
吾妻下駄
(
あずまげた
)
を
内輪
(
うちわ
)
に軽く踏みながら歩いて行く。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
服装
(
いでたち
)
は、
将棊
(
しょうぎ
)
の
駒
(
こま
)
を大形に散らしたる紺縮みの
浴衣
(
ゆかた
)
に、
唐繻子
(
とうじゅす
)
と
繻珍
(
しゅちん
)
の昼夜帯をばゆるく引っ掛けに結びて、空色
縮緬
(
ちりめん
)
の
蹴出
(
けだ
)
しを
微露
(
ほのめか
)
し、素足に
吾妻下駄
(
あずまげた
)
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わたくしはそれとすれ違いさま、いつもならば踏石の上にのって、催促がましく
吾妻下駄
(
あずまげた
)
をかんかんと踏み鳴らし、二階に向って「帰ってよ」と声をかけるのである。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
神田
猿楽町
(
さるがくちょう
)
に住んでいた。黄八丈の着物に白ちりめんの帯をしめて、女の
穿
(
は
)
く
吾妻下駄
(
あずまげた
)
に似た畳附きの下駄へ、白なめしの太い鼻緒のすがったのを穿いていた。四角い顔の
才槌頭
(
さいづちあたま
)
だった。
旧聞日本橋:14 西洋の唐茄子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
あたりを構わず橋板の上に
吾妻下駄
(
あずまげた
)
を
鳴
(
なら
)
す
響
(
ひびき
)
がして、小走りに突然お糸がかけ寄った。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
吾妻下駄
(
あずまげた
)
の音は天地の
寂黙
(
せきもく
)
を破りて、からんころんと月に響けり。渠はその音の
可愛
(
おかし
)
さに、なおしいて響かせつつ、橋の
央
(
なかば
)
近く来たれるとき、やにわに
左手
(
ゆんで
)
を
抗
(
あ
)
げてその
高髷
(
たかまげ
)
を
攫
(
つか
)
み
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「古土タダアゲマス」屋根に書いて
破目
(
はめ
)
に打付けてあるその露地へ入って行った女は
白足袋
(
しろたび
)
の鼠色になった裏がすっかり見えるように
吾妻下駄
(
あずまげた
)
の上でひっくらかえす歩き方を繰り返して行く。
豆腐買い
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
泥脚と
脛
(
すね
)
の、びしょびしょ雨の
細流
(
せせらぎ
)
に
杭
(
くい
)
の乱るるがごとき中へ、
刎
(
はね
)
も上げない
褄
(
つま
)
をきれいに、しっとりした
友染
(
ゆうぜん
)
を、東京下りの
吾妻下駄
(
あずまげた
)
の素足に
捌
(
さば
)
いたのが、ちらちらと
交
(
まじ
)
るを見ると
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
吾妻下駄
(
あずまげた
)
が可愛く並んで、白足袋薄く、藤色の裾を捌いて、濃いお
納戸
(
なんど
)
地に、浅黄と赤で、
撫子
(
なでしこ
)
と水の
繻珍
(
しゅちん
)
の帯腰、向う
屈
(
かが
)
みに
水瓶
(
みずがめ
)
へ、
花菫
(
はなすみれ
)
の
簪
(
かんざし
)
と、リボンの色が、蝶々の翼薄黄色に
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
橋の
中央
(
なかば
)
に、漆の色の新しい、黒塗の
艶
(
つや
)
やかな、
吾妻下駄
(
あずまげた
)
を
軽
(
かろ
)
く留めて、今は散った、青柳の糸をそのまま、すらりと
撫肩
(
なでがた
)
に、葉に綿入れた一枚小袖、帯に
背負揚
(
しょいあげ
)
の
紅
(
くれない
)
は
繻珍
(
しゅちん
)
を彩る花ならん
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
雪のすぐあとへは惜しいほど、黒塗の
吾妻下駄
(
あずまげた
)
で、軒かげに
斜
(
ななめ
)
に立った。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
吾
漢検準1級
部首:⼝
7画
妻
常用漢字
小5
部首:⼥
8画
下
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
駄
常用漢字
中学
部首:⾺
14画
“吾妻”で始まる語句
吾妻橋
吾妻
吾妻鏡
吾妻山
吾妻川
吾妻村
吾妻屋
吾妻座
吾妻袂
吾妻鑑