召使めしつかい)” の例文
「それはいかにもつらいことです。なにぶん忠義ちゅうぎ召使めしつかいでしたから。」こう影はいって、ためいきをつくようなふうをしました。
そして、三十メートルばかり歩いていると、一人の召使めしつかいが追っかけて来て、後からヒンドバッドの肩をたたきました。そして
われてもうそとは云いません。しかし家のなかでは実に私は一平の召使めしつかいのような働きをする時がいくらもあるのですから。
姉崎未亡人は、夫の病死以来召使めしつかいの人数も減らして、広い邸に中学二年生の一人息子と書生と女中の四人切りで住んでいた。
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
広大な庭を持った白堊はくあの洋館には、長年の痛風症に悩む老子爵と、十八になる孫娘の志津子、それに執事の苅田かりた平吉と三名の召使めしつかいが住んでいた。
海浜荘の殺人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
本家は、大家族で、隠居をかしらに、当主夫婦、跡継あとつぎの孫夫婦に子供たち、それに嫁入り前の孫娘たちに召使めしつかいを入れると二十人からの賑やかさだった。
万年青 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
または三井とか岩崎とかいう豪商ごうしょうが、私を嫌うというだけの意味で、私の家の召使めしつかいを買収して事ごとに私に反抗させたなら、これまたどんなものでしょう。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「このいのししにけて出たのは、まさか山の神ではあるまい。神の召使めしつかいの者であろう。こんなやつは今殺さなくとも、かえりにしとめてやればたくさんである」
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
い立てるようではあるが、ここのやかた召使めしつかいどもも多いことゆえ、夜明けをまって一こくもはやく嵯峨へお身を落ちつけあそばしたほうがよい、麿から阿闍梨どのへ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうど召使めしつかいがそこいらに多勢おおぜいいましたので、お医者さんはその人たちに言いつけて、できるだけ早く寝台をぐるりとまわして、死神が足のそばに立つようなきになおしました。
お浪の家は村で指折ゆびおり財産しんだいよしであるが、不幸ふしあわせ家族ひとが少くって今ではお浪とその母とばかりになっているので、召使めしつかいも居ればやとい男女おとこおんな出入ではいりするから朝夕などはにぎやかであるが
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
するとまたこうから一つ、女車おんなぐるまました。こんどはまえのよりもいっそう身分みぶんたかい人が、おしのびでおまいりにたものとみえて、おおぜいのさむらいや、召使めしつかいの女などがおともについていました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
狗畜生いぬちくしょう、やい手前はな父を討ったに相違ない、手前は召使めしつかいの菊を殺し、又家来林藏も斬殺きりころし、其の上ならず不義密通だと云って宿やどへ死骸を下げたが、其の前々まえ/\菊が悪事の段々を細かに書いて
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
病んでいるらしきは大方昼間の様子にても知れたりかつ右の頬と左の頬と熱も違えば脹れ加減も違うことは蹠にてもよく分るなりさほど苦しくば正直に云うたらよろしからん妾とても召使めしつかいいたわる道を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
よく召使めしつかい仕着しきせに、じぶんの着料きりょうよりもじょうとうな布をもちいるものがありますが、わたくしもじぶんの影を人間にしたててあるのです。
と思っていると、天井からスルスルと縄梯子なわばしごが下り、それを伝って、一人の小女こおんなが降りて来たが、召使めしつかいであろう。彼に一礼してその場を立去った。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この女はカシムの召使めしつかいの中でも、一番りこう者でありました。
「じゃあおばさんは、吉野太夫っていう人の召使めしつかいなの」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのとき命がおつれになっていたお召使めしつかい弟橘媛おとたちばなひめ
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
それから、ふたりは口ばたに肝油かんゆをぬって、よくすべるようにしました。召使めしつかいの者はみんな中庭へ出て、ふたりがウマに乗るのを見ていました。
それから結城家の人々(召使めしつかいも)赤井さん、私、其他来客一同が質問を受けたが、誰も別段変った答えをしなかった。
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おつきの召使めしつかいたちも、さっさと、出ていって、皇帝のことをおしゃべりしていました。女官にょかんたちはといえば、にぎやかなお茶の会を開いていました。
彦太郎は伯爵家の召使めしつかい達と一緒にぼんやりとその有様を眺めていた。彼は余りのことに思考力を失って了って、その時まで、まだ何事も気附かないでいたのだ。
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこへ制服を着た召使めしつかいが、ふたりやってきて、モミの木を、大きな美しい広間の中へ運びこみました。まわりのかべには、肖像画しょうぞうががかかっていました。
といった感じであった。彼は肉親の父親に対しても、うち召使めしつかいに対しても、時とすると母親に対してさえ、この不可思議な羞恥しゅうちを感じた。したがって彼は人間を避けた。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わしは、召使めしつかい共の蔭口もかまわず、風呂の立つのを待ちかねる、痴漢となり果ててしまった。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あなたなんて、ただの召使めしつかいよ。あたしはね、あなたが来るまえに、もうずいぶん、あなたの親類をつかっているのよ。ガチョウ一家のものも、イギリスの工場から来たものもよ。
でも、散歩に行くときにも、十二人の召使めしつかいがおともについていくのです。おまけに、召使たちは絹のリボンをナイチンゲールの足にゆわえつけて、それをしっかりと持っているのです。
老婦人は息子むすこ召使めしつかいたちに親しげにうなずいてみせました。それから、人々は老婦人をせまい暗い小路こうじの中の、とある小さな家へ運んで行きました。そこにこの老婦人は住んでいました。