まし)” の例文
ああ、こんな思を為るくらゐなら、いつそ潔く死んだ方がはるかましだ。死んでさへ了へば万慮むなしくこの苦艱くげんは無いのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
したか知ぬほんに一時に十年ばかり壽命じゆみやうちゞめたとうらみを云ば清兵衞否モウ其話は何かおれまけてくれ往昔むかしの樣に蕩樂だうらくをして貴樣の厄介やくかいに成にはましだらう實は此樣に仕上た身上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
白痴児はくちじとして生き残るよりは、あるいはこの方がましかも知れない、と人々は言合った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
渠奴等きゃつらの手に掛って弄殺なぶりごろしにされようより、此処でこうして死だ方がいっましか。
しま一周いつしうといつて、このしまはどのくらひろいものやら、また道中だうちう如何いかなる危險きけんがあるかもわからぬが、此處こゝ漠然ぼんやりとしてつて、しま素性すじやうわからず氣味惡きみわる一夜いちやあかすよりはましだとかんがへたので
いっそ其時帰ッちまや好かったんですけど、帰って来たって、うちが有るンじゃ有りませんしさ、人の厄介やっかいになって苦労する位なら、日陰者でもまだ其方がましかと思ったもんですからね、馬鹿さねえ、貴方あなた
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
僕なども今日こんにちの有様では生効いきがひの無い方じやけれど、このままでむなしく死ぬるも残念でな、さう思うて生きてはをるけれど、苦しみつつ生きてをるなら、死んだ方が無論ましですさ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
嗚呼ああの騎兵がツイそばを通る時、何故なぜおれは声を立てて呼ばなかったろう? よしあれが敵であったにしろ、まだ其方がましであったものを。なんの高が一二時間せめさいなまれるまでの事だ。
出しまてども一度の返事へんじもなし何處どこうして居なさるやらとてもあはれぬ者ならばいつそ死んだがましならめと打しほれしがかほふりあげ伯父樣どうぞ三河町とやらへいつて樣子を尋ねて下されとたのめば長庵小首こくび
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
三日で済む苦しみを一週間に引延すだけの事なら、いっそ早く片付けた方がましではあるまいか? 隣ののそばに銃もある、而も英吉利製イギリスせい尤物わざものと見える。一寸ちょッと手を延すだけの世話で、直ぐらちが明く。