出入しゆつにふ)” の例文
当地では石炭の出入しゆつにふに桟橋費一とんにつき三十五銭取られる如き費用を要するのをかれおいては一切省略しようとするのださうである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
その親戚は三遊派さんゆうはの「りん」とかいふもののおかみさんだつた。僕のうちへ何かの拍子ひやうし円朝ゑんてう息子むすこ出入しゆつにふしたりしたのもかういふ親戚のあつた為めであらう。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
南明館なんめいくわんあたりのくら横町よこちやうはじめてくち利合きゝあひ、それからちよく/\をとこ下宿げしゆくへも出入しゆつにふした事情じゞやう大体だいたいわかる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
奥に三味さみの聞ゆるたぐひにあらざるをもつて、頬被ほゝかぶり懐手ふところで、湯上りの肩に置手拭おきてぬぐひなどの如何いかゞはしき姿を認めず、華主とくいまはりの豆府屋、八百屋、魚屋、油屋の出入しゆつにふするのみ。
草あやめ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
時々とき/″\使童ボーイ出入しゆつにふして淡泊たんぱく食品くひもの勁烈けいれつ飮料いんれう持運もちはこんでた。ストーブはさかんえてる——
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
私は已に其の時は大學の英文科にはいつてゐたので一篇の著作に名聲を世に博したいと云ふ青春の野心止みがたく、矢張時勢の感化を免れずして屡花柳のちまた出入しゆつにふしたものだ。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
男が交際をして居る多くの客人きやくじんからも、怪しまれることのない、公然の間柄ともなり、秘密話ないしよばなしの一室にも、彼だけは遠慮をすることもいらないものとして、出入しゆつにふを許されるやうにもなつた。
瘢痕 (新字旧仮名) / 平出修(著)
一先ひとまづ一どうは、地主ぢぬしの一にんたる秋山廣吉氏あきやまひろきちしたくき、其所そこから徒歩とほで、瓢簟山ひようたんやまつてると、やま周圍しうゐ鐵條網てつでうもうり、警官けいくわん餘名よめい嚴重げんぢゆう警戒けいかいして、徽章きしやうなきもの出入しゆつにふきんじてある。
早速さつそく医者を取換へようと云ふので同君の親しくして居るル・ゴフさんを迎へに行つてれた。日本大使館へも十五年来出入しゆつにふし、日本赤十字社の特別社員にも推薦されて居る医者である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
なほこれと同じ飛行練習場が巴里パリイの近郊だけに十箇所から有ると聞いて如何いかに飛行機の研究がさかんであるかが想はれる。飛行場は一切陸軍省に属して居るから出入しゆつにふの人を騎馬の憲兵が誰何すゐかする。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)