内侍ないし)” の例文
ただ、ここでも考えさせられることは、新田義貞における勾当こうとう内侍ないしのように、高貞も宮中の女子を恩賞にもらっていたことである。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
使いの内侍ないしが、民人として国王の命にそむくことはできぬと言葉をはげましていうと、「国王の仰せ事をそむかば、はや殺し給ひてよかし」
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
帝のお居間のほうから仰せによって内侍ないしが大臣を呼びに来たので、大臣はすぐに御前へ行った。加冠役としての下賜品はおそばの命婦が取り次いだ。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
実子じつこ扶貴子ふきこが、浜子とあまりちがわない年齢で、税所敦子さいしょあつこ——宮中女官かえで内侍ないし——の作詞をい、杵屋正次郎きねやしょうじろう夫妻のふし附け、父団十郎の振附けで踊っている。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
... しやがつて、其方そっちよりは此方こっちが泣きてえ」と立掛り「さあ金を出さねえか、脇へこかしたな、し、尼あ引きずつて行つて、叩き売つて金にする」と内侍ないし引立ひったてに掛る。
俺の放蕩も畢竟ひっきょう臆病のせいなので、純潔な恋を求めて失望するのが恐ろしく、金銭で買った娼婦内侍ないしのたぐいなら、はじめッから期待もしないから騙されても腹も立たず
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
給事中きゅうじちゅう胡濙こえい内侍ないし朱祥しゅしょうとが、永楽中に荒徼こうきょうを遍歴して数年に及びしは、巻二百九十九に見ゆ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
べん内侍ないしと千代野との別れなどは、チョボを十分に使って一部の観客を泣かせたのである。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それは他でもない、安芸あき厳島いつくしまへご祈願にお出でになるのです。あすこは平家の人々がうやまあがめるお社でございます。何もおかしいことはありません、あすこには内侍ないしと申す舞姫がおります。
雛の宴五十の内侍ないし酔はれけり 召波しょうは
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
それをはるばる厳島まで行って参籠し、厳島の内侍ないしたちを巧くつかって、自分の失意悲嘆が、遠まわしに清盛の耳へ入るように仕向けた。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわんや又鄭和は宦官かんがんにして、胡濙こえいともにせるの朱祥しゅしょう内侍ないしたるをや。秘意察す可きあるなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
典侍ないしのすけ内侍ないし命婦みょうぶも絵の価値を論じることに一所懸命になっていた。女院も宮中においでになるころであったから、女官たちの論議する者を二つにして説をたたかわせて御覧になった。
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
さきに勾当こうとう内侍ないしのことを書いたがあらかた私の創作である。義貞がぎゃくを病んだのは事実だが、従来、内侍を賜う、という話は否定説の方が多い。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女別当にょべっとう内侍ないし、そのほか御親戚関係の王家の娘などもお付きしているのである。
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
内侍ないしはらののどかな春も、試合がはじまると一変して、時々あがる黄色いほこりに、群衆は、武者押しのような声を揚げた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宮の御入内ごじゅだいの時に童形どうぎょう供奉ぐぶして以来知り合いの女房が多くて中将には親しみのある場所でもあった。源氏の挨拶あいさつを申し上げてから、宰相の君、内侍ないしなどもいるのを知って中将はしばらく話していた。
源氏物語:28 野分 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ひるには、女官の新勾当しんこうとう内侍ないしが、母の危篤きとくとかで、おはしたの女や小女房ら数名と共に、輿こしに乗って、外出していた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、ここは春日野ではなく、もと平安三条の内侍ないしはらであった。その内侍ヶ原には、きょうは何か興行があるらしい。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
公卿や郎党のあいだにも、とりどり男女の情事もなかったとは限らない。厳島いつくしまの“厳島の内侍ないし”といったような熊野巫女みこもたくさんにいたのである。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
局は、頼朝の乳母うばで二条院にいた頃は丹後の内侍ないしといわれていた女性にょしょうである。去年三月、母とも死に別れてからは、いっそう頼朝には恋しい乳母だった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
楠木正行との情話に仕立てあげてある「べん内侍ないし」のことなどもまた、話は優雅にできているが、それも女子を一個の品とみている時代の女性観を知る以外には
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝、皇居の深殿に土足のあとが残っていたり、内侍ないしつぼねの衣裳がごっそりくなっていたりする。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが蔵六は、折ふし途中で会った内侍ないしの供に加わって来たので、難なく要塞の本拠まで入れた。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なお、それにもまさる聞き物は、女蔵人にょのくろうどノ高砂、播磨はりま内侍ないしたち、あまたな女人の合奏だった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてさて、この憎い女をと、かの源氏物語にある朧月夜おぼろづきよ内侍ないしと関係した光源氏のように、御処分の事かと思っていると、そのまままた後宮において、なんらのお変りも見えず
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、その原因は、勾当こうとう内侍ないしの色香でなく、円心の詭計きけいでもない。一に彼の尊氏観が甘かったところに起因し、尊氏が打ッて逃げた“退きの布石ふせき”を読み違えていたことに重大な錯誤さくごがある。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここの社殿にいた内侍ないしたち(他社でいう神子みこの乙女のこと)だの徳大寺実定の口ウラにさえ、ころりとだまされて、わが子の栄職を譲らせてまで、実定に左大将の地位を与えている清盛である。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……あたらこのを、勾当こうとう内侍ないしの色におぼれ給うて」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勾当こうとう内侍ないしの噂だ。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勾当こうとう内侍ないし
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勾当こうとう内侍ないし
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)