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すす
ふりがな文庫
“
侑
(
すす
)” の例文
偶々
(
たまたま
)
さる会場で同席して帰途が同じだから同車で帰る途中、わたくしは彼を陋屋に請じて酒を愛する彼のために粗酒を
侑
(
すす
)
めた。
幽香嬰女伝
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
で、申しますには「
此器
(
これ
)
はごく
清浄
(
しょうじょう
)
です。夜前あなたが
喫
(
あが
)
ったのですから」と言ってバタ
滓
(
かす
)
の茶碗の縁に付いてあるのをそのまま
侑
(
すす
)
めるのです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
珊
(
さん
)
たる蕾の姿は霰や餅米のやうに小粒で美しい、どこか庭のすみの方に二三株、目立たぬほどに植ゑて置く心がけを
侑
(
すす
)
めるくらゐで、ぢみな花である。
冬の庭
(新字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
主は彼に向ひて宮の
家内
(
かない
)
の様子を
訊
(
たづ
)
ねけるに、知れる
一遍
(
ひととほり
)
は語りけれど、娘は
猶能
(
なほよ
)
く知るらんを、
後
(
のち
)
に招きて聴くべしとて、夫婦は
頻
(
しきり
)
に
觴
(
さかづき
)
を
侑
(
すす
)
めけり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
私が滞在していた新井の主人の話に
拠
(
よ
)
ると、鎌倉では頼家を毒殺せんと企て、
窃
(
ひそか
)
に怪しい薬を
侑
(
すす
)
めた結果、頼家の顔はさながら癩病患者のように
爛
(
ただ
)
れた。
修禅寺物語:――明治座五月興行――
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
舟には
酒肴
(
しゅこう
)
が出してあったが、一々どの舟へも、主人側のものを配ると云うような、細かい計画はしてなかったのか、世話を焼いて
杯
(
さかずき
)
を
侑
(
すす
)
めるものもない。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
一層嬉しいような恥しいような、さて又一層肚が落つかぬようで箸も早く置いたが、婢が小歌に茶を
侑
(
すす
)
めて、御新造さまと云ったのに貞之進は耳から赤くし
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
昨日の話の模様では、万事円満に収まりそうであったのに……。細君は一椀なりと召上らなくては、お腹が
空
(
す
)
いて
為方
(
しかた
)
があるまいと、それを
侑
(
すす
)
めに二階へ行った。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
砂埃
(
すなぼこり
)
の立つ白い
路
(
みち
)
を、二人は
鈍
(
のろ
)
い
俥
(
くるま
)
に乗って帰って来たが、父親が
侑
(
すす
)
めてくれた濁酒に酔って、俥の上でごくりごくりと眠っている小野田の
坊主頸
(
ぼうずえり
)
をした大きい
頭脳
(
あたま
)
が
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ト
談話
(
はなし
)
の内に茶を入れ、地袋の菓子を取出して昇に
侑
(
すす
)
め、またお鍋を
以
(
もっ
)
てお勢を
召
(
よ
)
ばせる。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
露些
(
つゆいささ
)
かも
偏頗
(
へんぱ
)
なく扱いやりしに、両女もいつか妾に
懐
(
なつ
)
きて、互いに競うて妾を
劬
(
いた
)
わり、あるいは肩を
揉
(
も
)
み脚を
按
(
さす
)
り、あるいは妾の
嗜
(
たしな
)
む物をば、
己
(
おの
)
れの欲を節して妾に
侑
(
すす
)
むるなど
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
麦稈
(
むぎわら
)
細工の無格好な蛇が赤い舌を出しているのを忘れずに召せとお
侑
(
すす
)
めしておく。
残されたる江戸
(新字新仮名)
/
柴田流星
(著)
いわく、長享二年十一月二十八日、宿房の大黒を招き、晨盤を
侑
(
すす
)
む。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
侑
(
すす
)
める者か、外の事は兎も角も、其の様な事をする女ではない
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
ちょうど晩であったものですからツァ・ルンバは、お酒をお上りなさいといって充分酒を
侑
(
すす
)
めた。ところが商隊長は
焦飲
(
やけのみ
)
のような具合にしきりに飲んで居った。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
ロダンは二人に椅子を
侑
(
すす
)
めた。そして興行師に、「少し応接所で待っていて下さい」と云った。
花子
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
村の人々は十五日の前の晩に色々のお斎糧を集めては、そのおかえりの時に
侑
(
すす
)
めるのでございますけれど、それとても、ほんのお
携
(
も
)
ちになれるだけしかお
提
(
さ
)
げになりません。
あじゃり
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
酒には礼ありて、おのれ辞せんとならば、必ず他に
侑
(
すす
)
めて酌せんとこそあるべきに、
甚
(
はなはだし
)
い哉、彼の手を
束
(
つか
)
ねて、御随意にと会釈せるや、満枝は心憎しとよりはなかなかに可笑しと思へり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
また食事の折々は暖かき料理をこしらえては妾に
侑
(
すす
)
める
抔
(
など
)
、
万
(
よろず
)
に親切なりけるが、約二週間を経て中の島監獄へ送られし
後
(
のち
)
も国事犯者を以て遇せられ、その待遇長崎の
厳酷
(
げんこく
)
なりし比に非ず。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
子息
(
むすこ
)
の
菊太郎
(
きくたろう
)
は、ニコニコしながら茶をいれて
衆
(
みんな
)
に
侑
(
すす
)
めた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
抽斎は
五百
(
いお
)
を
娶
(
めと
)
ってから、五百が少しの酒に堪えるので、勧めてこれを飲ませた。五百はこれを
旨
(
うま
)
がって、兄栄次郎と妹壻長尾宗右衛門とに
侑
(
すす
)
め、また比良野
貞固
(
さだかた
)
に飲ませた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
家主は毛糸の
衿捲
(
えりま
)
きを取って、夫婦に茶を
侑
(
すす
)
めなどした。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
間もなく「おとし」を添えた酒が出たので、
先
(
ま
)
ず爺いさんに
杯
(
さかずき
)
を
侑
(
すす
)
めて、物を言って見ると、元は相応な暮しをしただけあって、
遽
(
にわか
)
に身なりを
拵
(
こしら
)
えて座敷へ通った人のようではなかった。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
八月二十二日に抽斎は常の如く
晩餐
(
ばんさん
)
の
饌
(
ぜん
)
に向った。しかし五百が酒を
侑
(
すす
)
めた時、抽斎は
下物
(
げぶつ
)
の
魚膾
(
さしみ
)
に
箸
(
はし
)
を
下
(
くだ
)
さなかった。「なぜ
上
(
あが
)
らないのです」と問うと、「少し腹工合が悪いからよそう」といった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
侑
漢検1級
部首:⼈
8画