伯夷はくい)” の例文
してみると屈原よりも、漁父の方に達見がある。またかの伯夷はくい叔斉しゅくせいは、天下が周の世となるや、首陽山に隠れ、わらびを採って食った。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
伯夷はくい叔齊しゆくせいけんなりといへども、(七三)夫子ふうし益〻ますますあらはれ、顏淵がんえん篤學とくがくなりといへども、(七四)驥尾きびしておこなひ益〻ますますあらはる。
火把たいまつを握れば、火遂にその手に及ぶ、然り、思いの外殺急さっきゅうに及び来れり。伯夷はくい伝を読んで感激したる徳川光圀とくがわみつくにの如きは、劈頭へきとうの予言者にあらずや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
後、殷の紂王ちゅうおう、悪虐のかぎりを尽し、ついに武王立って、これを伐つも、なお伯夷はくい叔斉しゅくせいは馬をひかえて諫めておる。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
話を聞けば耳が汚れると塩梅あんばい式は、丸で今世の伯夷はくい叔斉しゅくせい、静岡はあたかも明治初年の首陽山しゅようざんであったのは凄まじい。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
古来、野の賢者として名高いのは、伯夷はくい叔斉しゅくせい虞仲ぐちゅう夷逸いいつ朱張しゅちょう柳下恵りゅうかけい少連しょうれんなどであるが、先師はいわれた。
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
乙丑中秋後いっちゅうちゅうしゅうご二日あにに寄する詩の句に曰く、苦節伯夷はくいを慕うと。人異なれば情異なり、情異なれば詩異なり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
昔時支那にて伯夷はくい叔齊しゅくせいの高潔を真似るにあらずして、創業費の乏きを補わんが為めにして、実に都下及び便利の地に住して衣喰いしょくするの人として决して知るべからざる事にして
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
武王ぶわう(二六)木主ぼくしゆせ、がうして文王ぶんわうし、ひがしのかた(二七)ちうつ。伯夷はくい叔齊しゆくせい(二八)うまひかへていさめていは
伯夷はくい叔斉しゅくせいは人の旧悪を永く根にもつことがなかった。だから人に怨まれることがほとんどなかったのだ。」
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
父にそむかず、師にそむかず、天にがっして人にがっせず、道に同じゅうして時に同じゅうせず、凛々烈々りんりんれつれつとして、屈せずたゆまず、苦節伯夷はくいを慕わんとす。壮なるかな
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この間まで丸で朝鮮人見たような奴が、恐ろしい権幕をもって呉れる物を刎返はねかえして、伯夷はくい叔斉しゅくせいのような高潔の士人に変化へんかしたとは、何と激変ではあるまいか。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
首陽山にを採るは伯夷はくい叔斉しゅくせいが生活を保たんがためなり。箪食飄飲たんしひょういん顔回がんかいが生活を保たんがためなり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
僕は右にげた二の例に接した時、ただちに心に浮んだことは伯夷はくい叔斉しゅくせいの話である。
真の愛国心 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「弟。おまえは、古人いにしえ伯夷はくい叔斉しゅくせいをどう思うね」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(四二)あるひいはく、(四三)天道てんだうしんく、つね善人ぜんにんくみすと。伯夷はくい叔齊しゆくせいごときは、善人ぜんにんものか。じんおこなひいさぎようし、かくごとくにして餓死がしせり。
劉秉忠りゅうへいちゅうを慕うの人道衍どうえんは其の功を成して秉忠の如くなるを伯夷はくいを慕うの人方希直ほうきちょくは其の節を成して伯夷に比せらるゝに至る。王思任おうしじん二律の一に句あり、曰く
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ソレも理窟の分らぬ小輩ならばもとよりよろしいが、争論の発起人でしきりに忠義論を唱えて伯夷はくい叔斉しゅくせいを気取り、又はそのみずから脱走して世の中を騒がした人達の気が知れない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
伯夷はくい叔斉しゅくせいはどういう人でございましょう。」
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「それはお前の思いちがいじゃ。もし仁者の言が必ず信ぜられるものなら、伯夷はくい叔斉しゅくせいが餓死することも無かったろうし、また、智者の説くところが必ず行われるものなら、王子比干おうしひかんが虐殺されることもなかったろう。」
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)