不具ふぐ)” の例文
この不具ふぐになったをごらんください。そして、いまでも、おもしますが、そのときのくも姿すがたがいかに神々こうごうしくて、ひかっていたか。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのために討手は襲いかかって王の御首みしるしを挙げることが出来たが、老婆の子孫にはその後代々不具ふぐの子供が生れると云う話。———
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
赤樫蛤刃あかがしはまぐりはの木刀は、そのまままことの剣であり、名人の打った一打ちが、急所へ入らば致命傷、命を落とすか不具ふぐになるか、二者一つにまっていた。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そのために独身を余儀なくされたといふと、僕が其女のため不具ふぐにされたと同じ事になる。けれども人間にはうまいて、結婚の出来できない不具ふぐもあるし。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「何んにも心當りはありません。不具ふぐではあつたが、あの娘は心掛の良い娘で、人樣に怨まれる筈もなく、こんなことになつては、可哀想でなりません」
重「へえ五体不具ふぐ、かたわと仰しゃるは甚だ失敬で、何処が不具かたわで、足も二本手も二本眼も二つあります」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こゝにおいて、はじめは曲巷ちまた其處此處そここゝより、やがては華屋くわをく朱門しゆもんされて、おくらざるところほとんすくなく、かれすもの、不具ふぐにしてえんなるををしみて、金銀きんぎん衣裳いしやうほどこす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もし私がこの時に女中の報知のままに直に湯に入りますれば確かに死んで居ったかあるいは死なぬにしろ不具ふぐの身となってとてもチベット行を満足することが出来なかったに違いない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
この割合をえても不具ふぐであり、不足しても不具である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
港八九は成就じょうじゅいたり候得共そうらえども前度せんどことほか入口六ヶ敷候むずかしくそうろうに付増夫ましぶ入而いれて相支候得共あいささえそうらえども至而いたって難題至極ともうし此上は武士之道之心得にも御座候得そうらえば神明へ捧命ほうめい申処もうすところ誓言せいげんすなわち御見分のとおり本意ほんいとげ候事そうろうこと一日千秋の大悦たいえつ拙者せっしゃ本懐ほんかいいたり死後御推察くださるべくそうろう 不具ふぐ
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
どんなにはないている野原のはらのながめはうつくしかろうとおもっても、不具ふぐかけることもできませんでした。やがて、そのれかかりました。あねは、ひとまどからまちほうをながめていました。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)