馬力ばりき)” の例文
「うん、だいじょうぶだ。このあいだから、ずいぶん練習したからね。それに、こっちの方が馬力ばりきが強いんだから、負けやしないよ。」
鉄人Q (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
和蘭陀おらんだのかんてるくというところで建造された軍艦で、木造蒸気内車もくぞうじょうきうちぐるま、砲十二もん馬力ばりき百、二百十とんというすばらしいやつだ。
もっと機の高度をあげればよいわけであるが、これ以上あげると、エンジンの馬力ばりきがたいへんおちるしんぱいがあった。
氷河期の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そうしてこの町をひいていく、馬力ばりき牛車ぎゅうしゃがどんなに長くつづいているのだろう。こんなたくさんの車や人が、どこからこうして出てくるのだろう。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
ある日農場主が函館はこだてから来て集会所で寄合うという知らせが組長から廻って来た。仁右衛門はそんな事には頓着とんじゃくなく朝から馬力ばりきをひいて市街地に出た。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
曙町の通から吉祥寺きっしょうじ前まで、広く取払われて道路になるので、私どもの家並は皆取崩されるのですから、荷物を山と積上げたトラック、馬力ばりきで一杯です。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
それも勿論そうぞうしいには相違ないが、私の枕を最も強くゆすぶるものは貨物自動車と馬力ばりきである。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その間に来島は本船に上って、帆布キャンバスで塞いだ穴の内側から、本式にピッタリと板を打付けた。一層馬力ばりきをかけて水を汲み出す一方に、らん限りの品物を海に投込む。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「さびを利かしてくんな」と馬力ばりきをかけるが、すし屋の方では、まぐろの安いときは、さびの方が高くつく場合があるから、こんな連中ばかりやってきてはやりきれないが
鮪を食う話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
花の開く頃になると、馬力ばりきや荷車に附けられて、桜林から仲の町に移された。大門口から水道尻まで、桜のあるところは青竹の欄干らんかんで囲われ、その囲みの中に朝顔灯籠がともし連ねられた。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
非常ひじやう強烈きようれつになつて、ほとんど四百四十馬力ばりき蒸滊機關じようききくわん匹敵ひつてきよしこの猛烈まうれつなる動力どうりよくが、接合桿せつがふかんをもつて車外しやぐわい十二車輪しやりんうごかし、つひこの堅固けんごなる鐵檻てつおりくるま進行しんかうはじめるのである。
その上に遠い山々はかさなって見える。比叡山——それを背景にして、紡績工場の煙突が煙を立登らせていた。赤煉瓦れんがの建物。ポスト。荒神橋には自転車が通り、パラソルや馬力ばりきが動いていた。
ある心の風景 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
馬力ばりきが一台来かゝつたが二人の様子には見向きもせずに行つてしまつた。
買出し (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
女の欲しい位の馬力ばりきがある時でないといかんな、と云って、二人は顔見合わせ、お互様になというように哄笑した、然し、彦さん、根が好きな道、その温泉の女というのは、とてもよい女というから
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
案内に来た青年は馬方うまかたで、馬力ばりきの荷物のうしろの方に空所あきを作って、そこに座布団を敷いて、三味線と、下駄を抱えた女を乗せると、最新流行のスットントン節を唄いながら
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それで済ませて置けば無事であったが、おいおい正月も近づくので、ここでいっそう馬力ばりきをかけて宣伝しようという料簡から、この虎の子は御上覧ごじょうらんになったものだと吹聴した。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そういう未来を考えると、われわれは、飛行技術といわず、あらゆる科学について、どんなに馬力ばりきをかけ金をかけて研究を急いでも、決して早すぎる、やりすぎる、ということはないのである。
成層圏飛行と私のメモ (新字新仮名) / 海野十三(著)
馬力ばりきが一台来かかったが二人の様子には見向きもせずに行ってしまった。
買出し (新字新仮名) / 永井荷風(著)
温習会の日も近づいたので、最後の馬力ばりきをかけているらしい。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
四谷街道に接しているせいか、馬力ばりきの車が絶間たえまなく通って、さなきだに霜融しもどけみちをいよいよこわして行くのも此頃このごろです。子供が竹馬に乗って歩くのも此頃です。火の番銭の詐欺さぎ流行はやるのも此頃です。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
正直正銘、金箔きんぱく付きの。精神病者が落ち行く地獄じゃ。尋常普通のキチガイ地獄じゃ。さてもこれから今馬力ばりきと。親に不孝な馬鹿声張り上げ。弁じ上げます地獄の話は。それにも一つしんにゅうませた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)