須原すはら)” の例文
是までに思い込まれし子を育てずにおかれべきかと、つい五歳いつつのお辰をつれて夫と共に須原すはらもどりけるが、因果は壺皿つぼざらふちのまわり
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その日は須原すはら泊まりということにして、ちょうどその通りみちにあたる隣宿妻籠つまご本陣の寿平次が家へちょっと顔を出した。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
先ほど、通りこえた須原すはら宿しゅくには、木曾将軍の四天王、今井兼平かねひらとりであとがあるところから「兼平かねひらせんべい」を軒並み売っていたため、とうとうそこでは、お通が根負けして
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まして須原すはらの驛の花漬賣はなづけうり少女をとめはいかにわが好奇の心を動かしけむ。われも亦願はくはこの山中の神韻に觸れて、美しき神のたまさかなる消息を聞かばやと思ふの念甚だ切なりき。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
翌朝お繼は早く泊りを立出たちいでゝ、せん申す巡礼と両側を流し、向うが此方こちらへ来れば、此方が向側と云う廻り合せで、両側を流しながら遂々とう/\福島を越して、須原すはらという処に泊りましたが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さかさまに落すが如し衣袂いべい皆なうるほひてそゞろさぶきを覺ゆれば見分けんぶん確かに相濟んだと車夫の手を拂ひて車に乘ればまたガタ/\とすさまじき崖道がけみちを押し上り押しくだし夜の十時過ぎ須原すはら宿やどりへ着き車夫を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
木曽の須原すはらには、射手いでの弥陀堂というのがありました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
須原すはらという人来てる?」
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
名物にうまき物ありて、空腹すきはら須原すはらのとろゝ汁殊のほか妙なるにめし幾杯か滑り込ませたる身体からだ此尽このまま寝さするも毒とは思えどる事なく、道中日記しまいて
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
福島から須原すはら泊まりで、山論和解の報告をもたらしながら、半蔵が自分の家の入り口まで引き返して来た時は、ちょうど門内の庭掃除そうじに余念もない父を見た。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
たびは今宵は此驛にやどらんと思ひしが、猶脚のつかれざると、次の驛なる須原すはらまで左程遠くもあらざるに勇を鼓して、とある茶榻ちやたう一休憩ひとやすみしたる後、靜かに唐詩を吟じつゝ驛を出づ。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
局留置 須原すはら ただし
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
木曾谷は福島から須原すはらまでを中三宿なかさんしゅくとする。その日は野尻のじり泊まりで、半蔵らは翌朝から下四宿しもししゅくにかかった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
立ち寄りて窓からでも投込まんと段々行くに、はたせるかなもみの木高くそびえて外囲い大きく如何いかにも須原すはらの長者が昔の住居すまいと思わるゝ立派なる家の横手に、此頃このごろの風吹きゆがめたる荒屋あばらやあり。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「お師匠さま、勝手にやりますよ。どうもお師匠さまの足の速いには、わたしも驚きましたよ。須原すはらから王滝まで、きょうの山道はかなり歩きでがありました。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「なんでも木曾十一宿の総代として、須原すはらからだれか行くそうです。大坂まで出張するそうです。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それから追い追いと木曾川のほとりに近づき、藪原とみやこし駅の間でその岸に移り、徳音寺村に出、さらに岸に沿うて木曾福島、上松あげまつ須原すはら野尻のじり、および三留野みどの駅を通り
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あゝこれが三留野みとめのといふところか、これが須原すはらといふところか、とおもひまして、はじめて村々むら/\とうさんにはめづらしくおもはれました。なにもかもとうさんにははじめてゞした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
奈良井宿詰ならいしゅくづめの尾張人足なぞは、毎日のようにおびただしく馬籠峠を通った。伊那助郷すけごうが五百人も出た日の後には、須原すはら通しの人足五千人の備えを要するほどの勅使通行の日が続いた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
上松あげまつ須原すはら野尻のじり三留野みどの妻籠つまごの五宿も同様であって、中には三留野宿の囲いうちにある柿其村かきそれむらのように山深いところでは、一村で松明七千把の仕出し方を申し付けられたところもある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「みんな気の毒だが、きょうは須原すはらまで通しで勤めてもらうぜ。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
須原すはらから三留野みどの、三留野から妻籠へと近づくにつれて、山にもたよることのできないこの地方の前途のことがいろいろに考えられて来た。家をさして帰って行くころの彼はもはや戸長ででもなかった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)