静粛せいしゅく)” の例文
旧字:靜肅
その軍隊ぐんたいはきわめて静粛せいしゅくこえひとつたてません。やがて老人ろうじんまえとおるときに、青年せいねん黙礼もくれいをして、ばらのはなをかいだのでありました。
野ばら (新字新仮名) / 小川未明(著)
それへ、筆太に、目付役たちが、黒々と書いて、大手門やその他の下馬下馬へ、掲げだしたので、ようやく、群衆は静粛せいしゅくかえった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
七円とう高い会費が、今日の聴衆を、可なり貴族的に制限していた。極楽鳥のように着飾った夫人や令嬢が、ズラリと静粛せいしゅくに並んでいた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「生徒の賞罰しょうばつは校長の権利である、われわれは校長に一任してなりだ、静粛せいしゅくに静粛にわれわれは決してさわいではいかん」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
それが、みんな熱心に、静粛せいしゅくに、頭の上の日のあたる世界をよそにして、研究をやっている。そのうちで野々宮さんはもっとも多忙に見えた。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
座長(木槌きづちを叩きて)「諸君、静粛せいしゅくに願いまする。本件の結論をテイラー博士より聴取したいと思います。テイラー博士」
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
したがってそこには『静粛せいしゅく』もなければ『謙遜』というような美徳もなく、あるものは『虚偽』と『偽善』ばかりです。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
だれの顔にも、何かしら、ゆうべとはちがった感情が流れており、互礼ごれいをすまして広間を出て行く時のみんなの足音も、これまでになく静粛せいしゅくだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
見廻わすと、桂のほかに四五名の労働者らしい男がいて、長い食卓に着いて、飯を食う者、酒を呑むもの、ことのほか静粛せいしゅくである。二人差向いでたくるや
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
なかなか本堂の中は静粛せいしゅくなもので、普通の時から見ますと僧侶も夜分で来る人も少なし、それにお経の唱え方の優しい事というたら音調が何となく厳格であって
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
暫らく天地に息を呑むような静粛せいしゅくが続く。その間に陽はずんずん昇り、周囲は明るくなる。やがて阿難の死んだような体から、かすかなうめき声が洩れ始め、その声は段々高くなって行く。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
当時まだ電燈は発明されておりませんでしたから、いく本かの美しい装飾そうしょくをほどこした銀色の燭台しょくだいが、テーブルの上に立て並べられ、皎々こうこうたる光のもとにいとも静粛せいしゅくに、食事がすまされました。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
初演の夜、聴衆は敵意に燃えて、非難と嘲笑ちょうしょう妨害ぼうがいのうちに劇は進んだが、聴衆はいつの間にやら不思議な感銘かんめいに引き入れられて、次第に静粛せいしゅくになるのをどうすることも出来なかったのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
しかし、案外、相手が静粛せいしゅくを保っているので、追っかけて
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
棺の来る時は流石さすが静粛せいしゅくなり。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
暴風あらしの去った一瞬の後は、誰のおもてにも、何か考え事がからんでいて、事件の起った前よりも遙かに、静粛せいしゅくな気が流れていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ざわめいていた群衆は、再び静粛せいしゅくに還った。彼等は、耳慣れない陸軍将校の言葉に、やや頭痛を覚えるのだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一時間なり二時間なり私の云う事を静粛せいしゅくに聴いていただく権利を保留する以上、私の方でもあなた方を静粛にさせるだけの説を述べなければすまないはずだと思います。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うじの上下は作法 によって知らるるなり、都鄙とひの人々はその言葉によって知らるるなり、ということがありますように、華族は特別に容貌も高尚なる姿があって、その作法もすべて風雅で静粛せいしゅくである。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
パン屋の軒先は、附近の下層階級の代表者が、黒山のように、だが水をうったように静粛せいしゅくに、アナウンサーの読みあげる臨時ニュースに耳を傾けていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
『万々一、そうした事の起った場合は、一同、静粛せいしゅくに御吟味を願い出で、赤穂引渡し以後の始末、われ等の衷心ちゅうしん、ただ真直まっすぐに申し出るほかはござるまい』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとい、あやまらないまでも恐れ入って、静粛せいしゅくに寝ているべきだ。それを何だこのさわぎは。寄宿舎を建ててぶたでも飼っておきあしまいし。気狂きちがいじみた真似まね大抵たいていにするがいい。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし、前田軍の鉄砲隊が、新手の静粛せいしゅくさをもって、水の如く、このわめきの中を走り、ずっと、陣地の先に離れて、ばたばたと“伏せ”の列をいたのをながめると。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戦争で、とうとい兵士は死ぬ、国力は減る、それをおぎなうのは赤ん坊の誕生だ、笑い事ではない。先生の家には留守番がないのだ。ちょっといってくる、静粛せいしゅくにしているんだぞ。
新学期行進曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
然し皆、武士ばかりだし——おごそかな刀試しなので、自然、見る者も立会い人も、静粛せいしゅくだった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「皆さん。静粛せいしゅくにして下さい。さもないと、出ていって頂きますよ」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一同、たちまちしーんと静粛せいしゅくになる(
新学期行進曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)