ひよ)” の例文
ひよッ子を育てるような金網の籠に犬は犬、猫は猫と二三匹か四五匹ずつ入れた奴がズーッと奥の方まで並んでいる。にわとりも居るし小羊も居る。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……(両手を腰にあてて、コートを歩きまわる)ほらね、——ピヨピヨひよっ子よ。十五の小娘にだってなって見せるわ。
「又お前がこの間のやうに、私に世話ばかり焼かせると、今度こそお前の命はないよ。お前なんぞは殺さうと思へば、ひよくびを絞めるより——」
アグニの神 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わし達は垣の内へ入つた。五六匹のひよが地に撒いてある麦を啄んでゐる。見た所では、僧侶の黒い法衣にも慣れたやうに、少しもわし達を怖がらない。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
うそつきの英雄を——法螺ほら吹きのシラノや空威張りのひよっ子のシャントクレルなどを——この時代が英雄としてることは、無理からぬことだ、と彼は言った。
ちひさなひよ時分じふんから、雄鷄おんどり自分じぶんべないものとばかりおもつてましたが、だん/″\おほきくなるうちに、自分じぶんえてはねてびつくりしました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
……ひよッ子はどんなだろう。鶏や、雀と違って、ただ聞いても、鴛鴦おしどりだの、白鷺のあかんぼには、博物にほとんど無関心な銑吉も、聞きつつ、早くまず耳を傾けた。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふくろが土をまるめてひよにするか、うかは真実疑はしいが、人間にはよくこんな真似をするのがある。
私は、舌病ぜつびやうに罹つたひよつ子の翼のやうに弱々しくつて、蒼ざめた哀れな相手の片腕に彈丸たまを一つ見舞つて來ました。そしてこれですつかり縁を切つてしまつたと思つたのでした。
「オイオイここへ珍客様が訪ねて来ていらッしゃるのに、何をいつまで、飯粒を取ッつけ合ったひよッ子みたいに、そこで首を集めているのよ。早く、お茶でもわかして持って来ねえな」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鷺組のお絹をひよに見立て、禽小屋とりごやへ追い込もうとするのである。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「又お前がこの間のように、私に世話ばかり焼かせると、今度こそお前の命はないよ。お前なんぞは殺そうと思えば、ひよくびを絞めるより——」
アグニの神 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ええ、この甘ったれのひよっ子さん……」イヴァン・ペトローヴィチは優しくつぶやいて、妻のひたい接吻せっぷんをして、「あなたは実によい時においでになったんですよ」
イオーヌィチ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
巣から落ちた木菟みみずくひよッ子のような小僧に対して、一種の大なる化鳥けちょうである。大女の、わけて櫛巻くしまきに無雑作に引束ひったばねた黒髪の房々とした濡色と、色の白さは目覚しい。
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
官立も、私立も鳥打帽が大流行で、職業婦人の卵も、賢母良妻のひよっ子も、かかとの高い靴を穿いた。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「さうです、五十前後でございます。」皆はひよのやうに口を揃へた。
「その理由を発見するあたわず」と叫ぶ奴はソックリそのままイギリスの哲学博士で、従って「結婚の生理的結果也」と感付いた奴が、最有力な日本の医学博士のひよッ子になる訳だ。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「私にやろう……と云ったんですもの。ほんとうの天狗のひよッ子だって。」
何も格別が上手でなくともいい、発行人に幾らか出版費の足し前を出すとか、それとも絵の二三ぷくも寄附すればいいので、さうした訳合わけあひでかなりの地位にわつてゐるひよ画家も少くはない。
うちの別嬪連中あまっちょどもがやいやい云っても逃げまわっているから、まだひよッ子だと思っていたんだが……こいつばかりはわかんねえかんな。しかし女に引っかかって逃げたんならいよいよ安心だ。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
禅師の説によると、ふくろは土をねて、それを暖めてひよにするものださうで、禅師は古人の歌やら伝説やらを引張り出してそれを証明した。そばで聴いてゐた人は禅師の物識ものしりに驚いたといふ事だ。