闇夜やみ)” の例文
もつとそれは、或機會あるきつかけ五位鷺ごゐさぎ闇夜やみさけぶ、からすく、とおな意味いみで、くものは、其處そこ自分じぶん一人ひとりでも、とりたれむかつてぶのかわからない。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
兎角とかくするほどあやしふねはます/\接近せつきんきたつて、しろあかみどり燈光とうくわう闇夜やみきらめく魔神まじん巨眼まなこのごとく、本船ほんせん左舷さげん後方こうほうやく四五百米突メートルところかゞやいてる。
貸提灯かしぢょうちんを提げて雪駄穿きで、チャラリ/\と又兵衛橋またべえばしを渡って押上橋おしあげばしの処へ来ると、入樋いりひの処へ一杯水が這入って居ります。向うの所は請地うけじ田甫たんぼでチラリ/\と農家の燈火あかりが見えます、真の闇夜やみ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さっと血潮が飛んだであろうが闇夜やみのことでわからない。
村井長庵記名の傘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かれが立てる処より間はるかに隔りたる建物の戸を開閉あけたてする音なるが、一種特別のひびきあれば、闇夜やみにも屠犬児は識別せるなり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どこかへ明日まで封じておきな。」「あいあい親方請取ろうか。」「そら渡すぞ。」と屠犬児が片手で突けば、飛んで来る、三吉を引抱ひんだきて、壮佼わかもの闇夜やみに消えぬ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何も穿かねえというんじゃねえ。しかもお提灯ちょうちんより見っこのねえ闇夜やみだろうじゃねえか、風俗も糸瓜へちまもあるもんか。うぬが商売で寒い思いをするからたって、何も人民にあたるにゃあ及ばねえ。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
苦笑にがわらひをしてまた俯向うつむいた……フとくと、川風かはかぜ手尖てさきつめたいばかり、ぐつしよりらしたあたらしい、しろ手巾ハンケチに——闇夜やみだとはしむかうからは、近頃ちかごろきこえたさびしいところ卯辰山うたつやまふもととほる、陰火おにび
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)