遼東りょうとう)” の例文
遼東りょうとう大野たいやを吹きめぐって、黒い日を海に吹き落そうとする野分のわきの中に、松樹山しょうじゅざんの突撃は予定のごとく行われた。時は午後一時である。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「まず、遼東りょうとうへ使いをはせて、鮮卑せんひ国王へ金帛きんぱくを送り、遼西りょうせい胡夷勢えびすぜい十万をかり催して、西平関せいへいかんへ進出させること。これ一路であります」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父中将は浪子が逗子に来たりしより間もなく、大元帥纛下とうか扈従こじゅうして広島におもむき、さらに遠く遼東りょうとうに向かわんとす。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
先年の日清戦争のように勝ってさえ遼東りょうとうを横取りされるというようなのは最初に善後策を考えておかないからだ。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
人馬の声や軍刀の斬り合う音は、もういつの間にか消えてしまった。日の光も秋は、遼東りょうとうと日本と変りがない。
首が落ちた話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
遼東りょうとう江陰侯こういんこう呉高ごこうを永平よりい、転じて大寧たいねいに至りて之を抜き、ねい王を擁してかんに入る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
遼東りょうとう白頭はくとういのこを珍しがりたる如く、屑屋先生は白菊を余り御覧なされぬ者と相見え候。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「三ごく干渉かんしょう遼東りょうとう還附かんぷ以来いらいうら骨髄こつずいてっしているんだ。理窟も糸瓜へちまもあるものか?」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その日は第二軍が遼東りょうとう半島に上陸した公報の来た日で、一週間ほど前の九連城戦捷きゅうれんじょうせんしょうとともに人々の心はまったくそれに奪われてしまった。街道にも町にも国旗がのきごとにたえず続いた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
丁令威ていれいい遼東りょうとうの人で、仙術を霊虚山れいきょざんに学んだが、後に鶴にして遼東へ帰って来て、城門の柱に止まった。ある若者が弓をひいて射ようとすると、鶴は飛びあがって空中を舞いながら言った。
「ハハそれじゃ遼東りょうとういのこであったか、やっぱりこんなに大きくて。」
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
隣邦の中国では、大同だいどうに兵乱があり、遼東りょうとうが騒いだりしていたが、げんの国号をあらためてみんとしてから、朱氏しゅし数百年の治世はまだゆるぎもしなかった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし遼東りょうとうの風に吹かれ、奉天の雨に打たれ、沙河しゃかの日にり付けられれば大抵なものは黒くなる。地体じたい黒いものはなお黒くなる。ひげもその通りである。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その彼が、結局自分も彼らと同じ能力の所有者だったということを、そうしてさらにいとうべき遼東りょうとうだったということは、どうしてやすやすと認められよう。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
せき夫人繁子しげこを書斎に呼びて懇々浪子の事を託したる後、同十三日大纛だいとう扈従こしょうして広島大本営におもむき、翌月さらに大山大将おおやまたいしょう山路やまじ中将と前後して遼東りょうとうに向かいぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
すなわよう遼東りょうとうを征するを令して、徐凱をして備えざらしめ、天津てんしんより直沽ちょくこに至り、にわかに沿いて南下するを令す。軍士なお知らず、の東を征せんとして而して南するを疑う。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
姚忠粛ちょうちゅうしゅくげん至元しげん二十年に遼東りょうとう按察使あんさつしとなった。
締めながら、おいこの宿は少し窮屈だね、浴衣ゆかたでぶらぶらする事は禁制なんだろうと聞いたら、ここがいやなら遼東りょうとうホテルへでも行けと云って帰って行った。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「曹操がみずから攻めてくるようだったら、それは容易ならぬことになる。北方の袁紹えんしょうですら一敗地に滅び、冀北きほく遼東りょうとう遼西りょうせいまで席巻せっけんしたあの勢いで南へきたら?」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
永楽元年には、韃靼だったんの兵、遼東りょうとうを犯し、永平えいへいあだし、二年には韃靼だったん瓦剌わら(Oirats, 西部蒙古)とのあい和せる為に、辺患無しといえども、三年には韃靼の塞下さくかを伺うあり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
河北の広大をあわせ、遼東りょうとう遼西りょうせいからもみつぎせられ、王城の府許都きょとの街は、年々の殷賑いんしんに拍車をかけて、名実ともに今や中央の府たる偉観と規模の大を具備してきた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「夢に故人を見たのだ。——遼東りょうとうの遠征に陣没した郭嘉かくかが、もし今日生きていたらと思い出したのだ。予も愚痴をいう年齢としになったかと思うと、それも悲しい。諸将よ、笑ってくれ」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遼西りょうせい遼東りょうとう
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)