軽々けいけい)” の例文
旧字:輕々
これはなかなか大切な事で、婦女子は未来の国民を造るのでありますから、その国の婦女子の事を軽々けいけい看過かんかすることは出来ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
けだし論者のごとき当時の事情じじょうつまびらかにせず、軽々けいけい他人の言によって事を論断ろんだんしたるがゆえにその論の全く事実にはんするも無理むりならず。
速記本などで読めば、軽々けいけい過ごされてしまう所である。ところが、それを高坐で聴かされると、息もつけぬ程に面白い。
寄席と芝居と (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
軽々けいけいに断じてはならん。そちの一言とて、将士のあいだへは微妙な影響をもつ。かりそめにも、敵を軽視するがごとき風をわが陣中にかもすべきでない
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし原子力の解放や飛行機の発達が人類のために「役に立つ」ことかどうかは、軽々けいけいには決められない。
ネバダ通信 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
この点については我輩わがはいも氏の事業を軽々けいけい看過かんかするものにあらざれども、ひとあやしむべきは、氏が維新のちょうきの敵国の士人と並立ならびたっ得々とくとく名利みょうりの地位にるの一事なり
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いずれにしても、食いもの話はあまりにも広く深いので、軽々けいけいに論じ切れるものではないようだ。だから多くのひとの食物談というものが、いつの場合もでたらめである。
美食七十年の体験 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
手短に申すならば、俳諧はその芸術的価値以外に、いかなる文化史的価値を我々に供与するか。わからぬ人が仮に皆無と言っても、それは軽々けいけいに信じない方がよいのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
然れども今これを絵画的効果の上より論ずれば決して軽々けいけい看過かんかすべきものに非ざるなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
姑媳こそくの間に軽々けいけい一片のことばを放ち、一指を動かさずして破裂せしむるに何の子細かあるべき。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
(註五)「」はこのあいだに伝吉の枡屋の娘を誘拐ゆうかいしたり、長窪ながくぼ本陣ほんじん何某へ強請ゆすりに行ったりしたことを伝えている。これも他の諸書に載せてないのを見れば、軽々けいけい真偽しんぎを決することは出来ない。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これらは決して軽々けいけいに看過することの出来ない英領インド政府の遣り方であるのみならず、チベット一般の国民のためにもなるべく便宜を得るようにして居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
すなわちこれ我輩わがはいが榎本氏の出処しゅっしょ所望しょもうの一点にして、ひとり氏の一身のめのみにあらず、国家百年のはかりごとにおいて士風消長しょうちょうめに軽々けいけい看過かんかすべからざるところのものなり。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
軽い恋愛の遊戯とは云いながら、再会の望みなき事を初めから知りぬいていた別離の情は、いてこれを語ろうとすれば誇張に陥り、之を軽々けいけいに叙し去れば情を尽さぬうらみがある。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
初めは平和、次ぎに小口径の猟銃を用いて軽々けいけいに散弾をき、ついに攻城砲の恐ろしきを打ちいだす。こは川島未亡人が何人なんびとに対しても用うる所の法なり。浪子もかつてその経験をなめぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
、そう軽々けいけいにうごかし遊ばすのは、如何と思いますが
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
畢竟ひっきょう記者は婚姻契約の重きを知らず、随て婦人の権利を知らず、あたかも之を男子手中の物として、要は唯服従の一事なるが故に、其服従のきわみ、男子の婬乱獣行をも軽々けいけい看過かんかせしめんとして
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
論者が特にこの大切なる一点をば軽々けいけい看過してあたかも不問に附する者多きを見てひそかに怪しむのみか、その無識を冷笑するほどの次第なれば、大いに婦人の地位をしてこれを高処に進め
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
学育もとより軽々けいけい看過すべからずといえども、古今の教育家がみだりを予期して、あるいは人の子を学校に入れてこれを育すれば、自由自在に期するところの人物を陶冶とうやし出だすべしと思うが如きは
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
今日こそ世人の軽々けいけい看過するところならんといえども、その実は恐るべき禍乱の徴候にして、我が輩は天下後日ごじつの世相を臆測し、日本の学問は不幸にして政治に附着して、その惨状の極度はかの趙末
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)