路地ろぢ)” の例文
返事をきくと、おいとれですつかり安心したものゝごとくすた/\路地ろぢ溝板どぶいた吾妻下駄あづまげたに踏みならし振返ふりかへりもせずに行つてしまつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
どぶの匂ひと、汚物をぶつの臭氣と、腐つた人肉の匂ひともいふべき惡臭とがもつれ合つて吹き流れてゐる、六尺幅の路地ろぢ々々。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
女房にようばうくらがりの路地ろぢあしひかれ、あな掴込つかみこまれるやうに、くびから、かたから、ちりもと、ぞツとこほるばかりさむくなつた。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
忌々いま/\しさうに頭をふつて、急に急足いそぎあし愛宕町あたごちやうくらい狭い路地ろぢをぐる/\まはつてやつ格子戸かうしどの小さな二階屋かいやに「小川」と薄暗い瓦斯燈がすとうけてあるのを発見めつけた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ついと横の小さい路地ろぢれて暗がりに隱れた。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
何処どこまで歩いて行つても道はせまくて土が黒く湿しめつてゐて、大方おほかた路地ろぢのやうにどまりかとあやぶまれるほどまがつてゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
女房にようばうは、幾度いくど戸口とぐちつた。路地ろぢを、行願寺ぎやうぐわんじもんそとまでもて、とほり前後ぜんごみまはした。人通ひとどほりも、もうなくなる。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
片側かたかは朝日あさひがさし込んでるので路地ろぢうち突当つきあたりまで見透みとほされた。格子戸かうしどづくりのちひさうちばかりでない。昼間ひるま見ると意外に屋根やねの高いくらもある。忍返しのびがへしをつけた板塀いたべいもある。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
いはさんが仕事場しごとばから——行願寺内ぎやうぐわんじないにあつた、——路地ろぢうらの長屋ながやかへつてると、なにかものにそゝられたやうに、しきり樣子やうすで、いつもの錢湯せんたうにもかず、さく/\と茶漬ちやづけまして
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)