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賣拂
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うりはら
煩ひ漸く全快はなしたれども
足腰弱り
歩行事叶はず日々身代に苦勞なすと雖
種々物入嵩み五年程に地面も
賣拂ひ是非なく身上を
叔母の
云ふ
所によると、
宗助の
邸宅を
賣拂つた
時、
叔父の
手に
這入つた
金は、
慥には
覺えてゐないが、
何でも、
宗助のために、
急場の
間に
合せた
借財を
返した
上
そして父の信用に依ツて多少の金も
借入れる、また自分の持ツてゐた一切の
貴重品を
賣拂ツて、
節約してゐたら、お房
母子諸共一年間位は何うか支へて行かれるだけの用意をした。
堅く
閉て立出たり折柄
師走の末なれば
寒風肌を
貫く如きを追々の難儀に衣類は殘ず
賣拂ひ今は
垢染たる袷に
前垂帶をしめたるばかり
勿々夜風は
凌ぎ難きを
翌日宗助は
役所へ
出て、
同僚の
誰彼に
此話をした。すると
皆申し
合せた
樣に、
夫は
價ぢやないと
云つた。けれども
誰も
自分が
周旋して、
相當の
價に
賣拂つてやらうと
云ふものはなかつた。
如何にも殘念に思ひ
足摺して
歎き
悲みけれども今さら
詮術なければ養父の所持したる品々を
賣拂ひ諸入用の勘定等をなし又門弟の
中世話になりたる者へは夫々に
紀念分を