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そら
ふりがな文庫
“
諳
(
そら
)” の例文
但しその年表が東京だけにとどまって、関西方面まで手が廻らないのは、編者が関西劇界の事情をよく
諳
(
そら
)
んじていないがためである。
明治演劇年表
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼は
暫
(
しばら
)
くプログラムの表面を見ていたが、今の「木製の人形」に出ている十人のレビュー・ガールの名前を胸のうちに
諳
(
そら
)
んじた。
間諜座事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
何
町
(
まち
)
の何軒目には、何という人が住んでいるということを
諳
(
そら
)
んじて、何か非常な秘密を握った気になって
悦
(
よろこ
)
んでいたものである。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
トスカニーニはひどい近眼のため指揮台上の譜が読めないので、その人間離れのした記憶力でスコアを
諳
(
そら
)
んじてしまうのである。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
そういう詩の幾多の文句を陪審官諸氏が一語一語舌端に
諳
(
そら
)
んじておられるであろうことを自分はよく知っているが、——と検事長が言うと
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
▼ もっと見る
森久保氏は一度読んだ
書物
(
ほん
)
なら滅多に忘れない。何枚の何行目にどんな文句があるといふ事まで、ちやんと
諳
(
そら
)
んじてゐる。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
僕はプリュドンムも読んだ、民約論(ルーソーの)も知ってる、共和二年の憲法も
諳
(
そら
)
んじてる。『人民の自由は他の人民の自由が始まる所に終わる』
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
彼女は、
諳
(
そら
)
で覚えているのである。ただ耳を澄まして音を聴けばいい。それでもし、鍋が音を立てていなかったら、
柄杓
(
ひしゃく
)
で一杯水を
注
(
つ
)
ぎ込むのである。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
内部
(
うち
)
に満ちあふれる勝利と歓喜の情がその声に力をつけた。目の中が暗くなったので、行と行が入り交じってきたが、彼女は
諳
(
そら
)
でちゃんと読むことができた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「孔明先生には、よく
六韜
(
りくとう
)
を
諳
(
そら
)
んじ、三略に通ずと、かねがね伺っていますが、日々、兵書をお読みですか」
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どんな複雑な論理をも
容易
(
たやす
)
く
辿
(
たど
)
って行く人が、却って器械的に
諳
(
そら
)
んじなくてはならぬ語格の規則に悩まされたのは、想像しても気の毒だと、私はつくづく思った。
二人の友
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
このお
庇
(
かげ
)
に私は幼時から馬琴に親しんだ。六、七歳頃から『八犬伝』の挿絵を反覆して犬士の名ぐらいは義経・弁慶・亀井・片岡・伊勢・駿河と共に
諳
(
そら
)
んじていた。
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
帰ってからその文句の
廉々
(
かどかど
)
を
諳
(
そら
)
んずるにつけて罪恐ろしく、よせばよかったと思っても見、首尾よく行けばいゝとも思って見、思い思って五日と経ったが
返詞
(
へんじ
)
が無い
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
そは
閨情
(
けいじやう
)
、懷古、伊太利風土の美、藝術、詩賦等、何物にも附會し易きものあるを用ゐ、又人の喝采を博すべき段をば先づ作りて
諳
(
そら
)
んじ置くことを得る事なりと云ふ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
いままで何かでそんな字を見て、
諳
(
そら
)
んじてゐたが、何のことだかよく分らずにゐた——それが、いま、いかにもぴつたりと彼女には感ぜられた。が、それだけではなかつた。
おもかげ
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
ところが、この女地主の
手許
(
てもと
)
には、そんな名簿の
書附
(
かきつけ
)
などは何ひとつなく、彼女は殆んど全部
諳
(
そら
)
で憶えていた。そこでさっそく彼は、老婆に一々その名前をあげさせることにした。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
斜めに落ちかゝつたやうな位置で皎々と
懸
(
かゝ
)
つてゐた。細かい羽根のやうな冷たさを含んだ尾は、途方もなく大きい
穹形
(
ゆみなり
)
でゆるく消えてゐた。それは人間には一寸
諳
(
そら
)
では画かれない線だつた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
彼はツクルチ・ニニブ一世王の治世第何年目の何月何日の天候まで知っている。しかし、
今日
(
きょう
)
の天気は晴か
曇
(
くもり
)
か気が付かない。彼は、少女サビツがギルガメシュを
慰
(
なぐさ
)
めた言葉をも
諳
(
そら
)
んじている。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
三人は
空濠
(
からぼり
)
を横に通り越してなお高く上った。とうとう四方にあるものは山の頭ばかりになった。そうしてそれが一つ残らず昔の砲台であった。中尉はそれらの名前をことごとく
諳
(
そら
)
んじていた。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
決して四角でないことなどを
諳
(
そら
)
んじていた。
幼年時代
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
何遍もくり返して、
諳
(
そら
)
で覺えてしまひましたが、——あの晩、騷ぎの眞つ最中にお元の聲を聞き付けて、六助と勘次とあつしが驅け付けました。
銭形平次捕物控:136 鐘五郎の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
百首のうちに幾つあるということを
諳
(
そら
)
んじてしまって、
初五文字
(
しょごもじ
)
を読んでしまわないうちに、どれでも
好
(
い
)
いように、二三枚のかるたを押えてしまうことが出来なくては
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
新一の大胆不敵にしてしかも
寸毫
(
すんごう
)
の錯誤なき活動は望月少佐を驚歎せしめた。彼はこの怪屋の構造を
諳
(
そら
)
んじ、どこにどんな見張りがいるかを、掌を指すがごとく知り尽していた。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
沙翁
(
シェイクスピア
)
は文人として英国のみならず世界の最大の名で、その作は上下を通じて
洽
(
あまね
)
く読まれ、ハムレットやマクベスの名は沙翁の伝記の一行をだも読まないものにも
諳
(
そら
)
んぜられている。
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
と、ヨハンは、お蝶にもわかることばに訳して、
諳
(
そら
)
で読んで聞かせてから
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その頃の車夫にはなかなか芝居の消息を
諳
(
そら
)
んじている者もあって、今度の新富チョウは評判がいいとか、猿若マチは景気がよくないとか、車上の客に説明しながら
挽
(
ひ
)
いてゆくのをしばしばきいた。
島原の夢
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ペトラルカが小抒情詩をば、盡く
諳
(
そら
)
んぜしめられき。ダンテが作をば生徒の目に觸れしめざりき。我は僅に師の詞によりて、そのおもなる作は、地獄、淨火、天堂の三大段に分れたるを知れりしのみ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
彼はわたしという人間を
諳
(
そら
)
で知っていたのである。
地下生活者の手記
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
道
(
みち
)
ゆきのさざめき、
諳
(
そら
)
に
聞
(
き
)
きほくる
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
六十余種の名香、一つとして
諳
(
そら
)
んじないものは無いと信じ切って居る丈太郎ですが、この香ばかりは得体がわかりません。
新奇談クラブ:05 第五夜 悪魔の反魂香
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
川手氏さえ戸惑いしそうな複雑な邸内の間取りを、子供の癖にちゃんと
諳
(
そら
)
んじているらしく、少しも躊躇しないで、廊下から座敷へ、座敷からまた別の廊下へと、グングン進んで行く。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「一見にも及ぶまい。その方としては内容の、一行一行、
諳
(
そら
)
んじているほどの物。——そちがやしきの炉の上に懸けつるしあった物。……紋太夫、そちの弁舌も、はや無用と、
覚
(
さと
)
ったであろう」
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その頃の車夫にはなかなか芝居の消息を
諳
(
そら
)
んじている者もあって、今度の新富チョウは評判がいいとか、猿若マチは景気がよくないとか、車上の客に説明しながら
挽
(
ひ
)
いてゆくのをしばしば聞いた。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
道ゆきのさざめき、
諳
(
そら
)
に聞きほくる
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
何遍もくり返して、
諳
(
そら
)
で覚えてしまいましたが、——あの晩、騒ぎの真っ最中に、お元の声を聞き付けて、六助と勘次とあっしが駆け付けました。
銭形平次捕物控:136 鐘五郎の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
丹六は当代には珍らしい日本水泳が上手で、溺れる者の救助などは、伝統的な方法をちゃんと
諳
(
そら
)
んじていたのです。
奇談クラブ〔戦後版〕:11 運命の釦
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その頃は江戸八百八町と言つても、人口にして百萬に充たず、有名な物持や大町人や、筋の通つた家柄は、御用聞の平次ならずとも大方
諳
(
そら
)
んじて居たのです。
銭形平次捕物控:321 橋場の人魚
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
その頃は江戸八百八町と言っても、人口にして百万に充たず、有名な物持や大町人や、筋の通った家柄は、御用聞の平次ならずとも大方
諳
(
そら
)
んじていたのです。
銭形平次捕物控:321 橋場の人魚
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
語り尽した雑談の数々は、
素
(
もと
)
より一つも記憶しませんが、藤波金三郎の不思議な情熱だけは忘れることも出来ない記憶になって、片言隻句までも
諳
(
そら
)
んじて居ります。
奇談クラブ〔戦後版〕:17 白髪の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
巨盗の幽霊の手紙は、明らかに紛失しましたが、さいわい総右衛門が文句を
諳
(
そら
)
んじているのと、留吉が筆跡や紙をよく見ておいたので、大体のことは平次にも想像がつきます。
銭形平次捕物控:150 槍の折れ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
こんな社会の消息なら、誰よりもよく
諳
(
そら
)
んじて居る千種十次郎は、いろんな事情を考え乍ら、乗ったタクシーの尻を引っ
叩
(
ぱた
)
くような心持で、代官山の長島博士の門口へ着きました。
音波の殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
私は、この文字通り
棟
(
はり
)
に
充
(
み
)
つる一万枚のレコードを、くり返しくり返し聴いて来た。レコードされている限り、いろいろの曲は聴き尽し、いろいろの演奏家の癖は
諳
(
そら
)
んじてしまった。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
私はそんな心持にはなれませんでしたが、友人の最後の望みに
反
(
そむ
)
くわけには行きません。友人の手からストラドヴァリウスを受取って、私が
諳
(
そら
)
んじて居る限りの、静かな淋しい曲をひいてやりました。
天才兄妹
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
諳
漢検1級
部首:⾔
16画
“諳”を含む語句
諳記
諳誦
諳錬
諳厄利亜
諳然
諳算
諳譜