行商ぎょうしょう)” の例文
さすがに、子供こどもどうしのあいだでは同情どうじょうがあって、行商ぎょうしょうると、鉛筆えんぴつや、かみなどを学校がっこう生徒せいとってくれます。ありがたいことです。
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)
岩亀横町から花咲橋を渡って、高島町の方へ出た河岸かしぶちに、大きな立て看板が何屋か分らない店頭に立ててあった。“小間物行商ぎょうしょう人ヲ募ル。商品貸与。
そうしてそのあくる日からまた普通の行商ぎょうしょうの態度に返って、うんうん汗を流しながら歩き出したのです。しかし私は路々みちみちその晩の事をひょいひょいと思い出しました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あるいは連寂衆れんじゃくしゅうという一種の部落があって、ここで行商ぎょうしょうをしていたという言い伝えもある。そのためかどうかは知らぬが、農村の人たちはあまりこれを使っていなかった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
なぜならばもし巡礼者であれば巡礼に必要な食品を背負って居るところの荷馬とかあるいはヤクとかをいて居る訳であるのにそういうものはない。行商ぎょうしょうかと思えば行商でもない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それだけならぼくは冬に鉄道てつどうへ出ても行商ぎょうしょうしてもきっとかえしをつける。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
父親ちちおやは、なまもので、その教育きょういくができないために、行商ぎょうしょうにきたひとにくれたのが、いま一人前にんまえおとことなって、都会とかい相当そうとうみせしている。
空晴れて (新字新仮名) / 小川未明(著)
つまり二人は暑さのため、しおのため、また歩行のため、在来と異なった新しい関係に入る事ができたのでしょう。その時の我々はあたかも道づれになった行商ぎょうしょうのようなものでした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
行商ぎょうしょう流行期ともいえる時代が、かつては世間にあったようである。
女房にょうぼううちは、まずしかったのであります。主人しゅじんは、行商ぎょうしょうをして、晩方ばんがたくらくならなければかえってこなかったのでした。
お化けとまちがえた話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつか、青年せいねんが、行商ぎょうしょうにきた時分じぶんってきたような、あお貝細工かいざいくや、ぎんのかんざしや、口紅くちべにや、香油こうゆや、そのほかおんなたちのきそうなあか絹地きぬじや、淡紅色うすべにいろぬのなどであったのです。
北の不思議な話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかも、彼女かのじょ孤児みなしごであって、叔母おばさんにそだてられたのであるが、叔母おばさんも、この結婚けっこんには不賛成ふさんせいでした。なぜなら、相手あいてというのは、とおたびから行商ぎょうしょうにきた、まずしげな青年せいねんだったからです。
北の不思議な話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
行商ぎょうしょうあるく、三ちゃんのおばさんが、まちからのかえりとみえて、おおきなしょって、はらとおりかかりましたが、三にんが、おんばこで相撲すもうっているのをると、にっこりわらってまりました。
草原の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)