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落莫
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らくばく
ふりがな文庫
“
落莫
(
らくばく
)” の例文
家も住む人がなくなって売屋敷となっておるその
落莫
(
らくばく
)
の感じのするところのものを、天然も冬枯れておる木立の中に尋ね入るのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
彼はその
当座
(
とうざ
)
どこへ行っても、当然そこにいるべき母のいない事を見せられると、必ず
落莫
(
らくばく
)
たる空虚の感じに圧倒されるのが常であった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
という流言は、ほんの一時にせよ、
魔符
(
まふ
)
のように、武田陣のあいだに広まり、みるみるうち
落莫
(
らくばく
)
たる気落ちの色が全軍を
蔽
(
おお
)
った。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
げんに雨と
靉日
(
あいじつ
)
と
落莫
(
らくばく
)
たるただずまいとが、いましっかり私を押さえつけて、この多角的な怪物の把握で窒息させようとしているくらいだ。
踊る地平線:02 テムズに聴く
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
ああ、この先の、生のない、声のない、
落莫
(
らくばく
)
たる世間……いや、今日はまだそんな事は考えられない……だが
明日
(
あす
)
は、明日はそうなるだろう。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
▼ もっと見る
艇
(
てい
)
は
揺
(
ゆ
)
れるしオォルは揃わぬし、外から見た目には
綺麗
(
きれい
)
でも、ぼくには早や、
落莫
(
らくばく
)
蕭条
(
しょうじょう
)
の秋となったものが感ぜられました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
頃日、机に向っていると、矢折れ刀つきた
落莫
(
らくばく
)
たる気持ちだけれども、それは、自分で這入りいい処をただがさがさと摸索していたに過ぎないのだ。
生活
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
近所の衆や、親類の者が來て、今日の葬式の支度だけは急いで居りますが、悲劇の家は、何となく
落莫
(
らくばく
)
として、身に沁みるやうな淋しさがあります。
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
この
落莫
(
らくばく
)
たる生活があわれを認められ、
終
(
つい
)
に人間の詩の中に入って来るのも、そう遠い未来ではないように思われる。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
だが話し手としては、秋風
落莫
(
らくばく
)
たるところへ明るい光をささせる効果を狙って、そうした話を加えたようであった。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
父親は娘の前途を
呪
(
のろ
)
っただけで、
行方
(
ゆくえ
)
を捜索しようともしなかった。家の中はいよいよ
落莫
(
らくばく
)
たるものになった。主人の
吝嗇
(
りんしょく
)
はますます露骨になってきた。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
誰かも云ったように、砂漠と苦海の外には何もない荒涼
落莫
(
らくばく
)
たるユダヤの地から必然的に一神教が生れた。
札幌まで
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
唯、一帯の荒涼な風景の
凡
(
すべ
)
てから或る広々した思いがしたばかりであった。それとむすことを結びつけて考えようとするお俊は、なお
落莫
(
らくばく
)
としたものを感じた。
童話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
正月二十日は東宮の
御袴着
(
おんはかまぎ
)
、ついで
御魚味初
(
おんまなはじめ
)
というので、宮中はめでたい行事で賑ったが、
落莫
(
らくばく
)
とした鳥羽殿の法皇にはほとんど別世界の出来事のように思われた。
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
が、こう世の中が
世智辛
(
せちがら
)
くなっては緑雨のような人物はモウ出まいと思うと何となく
落莫
(
らくばく
)
の感がある。
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
午後四時ごろで、空がどんよりとくもつてゐた。
落莫
(
らくばく
)
とした小さな駅だから、赤帽なんかもゐない。
念仏の家
(新字旧仮名)
/
小寺菊子
(著)
或は戦争に巻きこまれぬ前はこうでもなかったのかも知れないが、まことに
落莫
(
らくばく
)
としたものである。
中支遊記
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
豁然
(
かつぜん
)
として視野の開けた今でも、まだその辺見える限りは、ただ小高い丘や野草の咲き乱れた、高原ばかり!
断崖
(
だんがい
)
と見えて、もう海は見えませんが、ただ、荒涼として、
落莫
(
らくばく
)
として
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
いまその魏延をも除くならば、蜀陣の戦力はさらに
落莫
(
らくばく
)
たらざるを得ない。孔明がじっと
怺
(
こら
)
えているのは、そのためであろうと楊儀は察した。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
近所の衆や、親類の者が来て、今日の葬式の支度だけは急いでおりますが、悲劇の家は、何となく
落莫
(
らくばく
)
として、身に沁みるような淋しさがあります。
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
富岡は馬鹿々々しいと思ひながらも、
亦
(
また
)
、東京へ戻つてからの現実を考へると、
落莫
(
らくばく
)
とした感情が鼻について来る。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
その小柳雅子にとうとう会うことができた、その結果がこんなとは、——こんな切ない悲しみ、こんな
落莫
(
らくばく
)
とした疲れとは、——こりゃ一体どういうのだ。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
こういう不安は、彼の上に、何よりも堪えがたい、
落莫
(
らくばく
)
たる孤独の情をもたらした。彼は彼の尊敬する和漢の天才の前には、常に
謙遜
(
けんそん
)
であることを忘れるものではない。
戯作三昧
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
客観写生をおろそかにした人の俳句はたとい豊富な感情を
裡
(
うち
)
に蔵していても、その表現されたところを見ると
落莫
(
らくばく
)
として砂を
噛
(
か
)
む如きものが多い。これは描写が
拙
(
つたな
)
いからである。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ああ、孔明に先立たれてとり残された劉備。考えてみても、
落莫
(
らくばく
)
たるものではないか。わしの落胆、わしのさびしさ、
喩
(
たと
)
えるものもありはしない
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれども私は
猶
(
なほ
)
想像する。
落莫
(
らくばく
)
たる百代の後に当つて、私の作品集を手にすべき
一人
(
いちにん
)
の読者のある事を。さうしてその読者の心の前へ、
朧
(
おぼろ
)
げなりとも浮び上る私の
蜃気楼
(
しんきろう
)
のある事を。
澄江堂雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その上前に言ったように、
大
(
おおき
)
い美々しい鳥を殺したのだという事が、美くしい春の夜らしい心持はしながらも、
何処
(
どこ
)
となく
落莫
(
らくばく
)
の感じがある、そこにも気の弱りを導く一つの原因はあるのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ここの台所は、いつも
落莫
(
らくばく
)
として食物らしい
匂
(
にお
)
いをかいだ事がない。井戸は、囲いが浅いので、よく
猫
(
ねこ
)
や犬が
墜
(
お
)
ちた。そのたび、おばさんは、
禿
(
はげ
)
の多い鏡を上から照らして、深い井戸の中を覗いた。
風琴と魚の町
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
草も木も枯れて、山路のながめは、
落莫
(
らくばく
)
たるものだったが、その夜は、霜でもおりているように、月の光が白かった。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その台所道具の象徴する、
世智辛
(
せちがら
)
い東京の実生活は、何度
今日
(
きょう
)
までにお君さんへ迫害を加えたか知れなかった。が、
落莫
(
らくばく
)
たる人生も、涙の
靄
(
もや
)
を
透
(
とお
)
して見る時は、美しい世界を展開する。
葱
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「いや」ふと、彼女の
寂寥
(
せきりょう
)
は、
落莫
(
らくばく
)
と青春の葉をふるい落した林のように悲しみを
奏
(
かな
)
でてくるのであった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
再会の望みも空しく、若き友忠利を失った沢庵の
落莫
(
らくばく
)
は、想像に余りがある。彼は小出吉英に宛てて
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこをヒラリと躍り越えると、
落莫
(
らくばく
)
とした冬木立の下に、サーッと響いてゆく水音が聞こえた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その曹操の死は、早くも成都に聞え、多年の好敵手を失った玄徳の胸中には、
一抹
(
いちまつ
)
落莫
(
らくばく
)
の感なきを得なかったろう。敵ながら惜しむべき巨人と、歴戦の過去を顧みると同時に
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
天顔に
咫尺
(
しせき
)
し、また当年の
落莫
(
らくばく
)
荒涼たる御所の有様や朝儀の
廃
(
すた
)
れや幕府の無力や人心の
頽廃
(
たいはい
)
など——見るもの聞くものに若い心を打たれながら——実に彼の大志は泉のごとく噴き出したものだった。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
聖覚法印
(
しょうかくほういん
)
とか、
蓮生
(
れんしょう
)
とか、分別ざかりの人々にも、なお、
叡山
(
えいざん
)
をはじめ、ほかの歴史あり権威ある旧教の法城が、なんとなく、
落莫
(
らくばく
)
としてふるわない傾向があるのに、それらの大法団から比べれば
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と聞え、全軍の士気は、
落莫
(
らくばく
)
と
沮喪
(
そそう
)
してしまった。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
落
常用漢字
小3
部首:⾋
12画
莫
漢検準1級
部首:⾋
10画
“落莫”で始まる語句
落莫寂寥