荒鷲あらわし)” の例文
われをわすれ、樺の密林みつりんけこんだ。見ると、なかでも大きな一本の樺の木に、あの竹童のっている荒鷲あらわしがつながれてあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なあに、日本海軍なんか恐れることはありませんよ。さすがの昭和遊撃隊も、僕の『荒鷲あらわし』にかかっては、意気地がありませんからね。」
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
ちょうどそのとき、ラジオのニュースで、きょうも荒鷲あらわしてきの○○飛行場ひこうじょう猛爆もうばくして多大ただい戦果せんかおさめたことをほうじた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「うゝん、ちがふよ。僕は空の荒鷲あらわしになるんだ。だから今のうちから、高いところにのぼつて、なれるんだ。『僕は少年航空兵』ほら来た。あれは複葉の偵察機だよ。」
賢い秀雄さんの話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
昭南島から、わが陸海の荒鷲あらわしが、翼を休めるウリンの飛行場に着いたのは、きのうの正午だった。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
日本にっぽん荒鷲あらわしだ。」と、さけんだものがあります。そらくろくおおうように、爆撃機ばくげききあたまうえをすれすれにぶかとみると、てきのトーチカをがけて、爆弾ばくだんとしました。
しらかばの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たとえば自分の身を変じて荒鷲あらわしに成ろうと思う時には、荒鷲を専念に祈るのじゃ。そして自分を忘れるのじゃ。完全に自分が忘れられた時、初めて荒鷲に化することが出来る。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、たか調しらべ荒鷲あらわしの、かぜたゝいてぶごとく、ひく調しらべ溪水たにみづの、いはかれてごとく、檣頭しやうとうはし印度洋インドやうかぜげんくだくるなみおとして、本艦々上ほんかんかんじやう暫時しばしなりまなかつた。
私は荒鷲あらわしのようにたけりたけって、グラスをつかんだ。飲んだ。ああ、私はそのときのほろにがい酒の甘さを、いまだに忘れることができないのである。ほとんど、一息に飲みほした。
断崖の錯覚 (新字新仮名) / 太宰治黒木舜平(著)
僕は、素早くそれを拾おうとしたが、同時に荒鷲あらわしのような手がそれに伸びた。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
この一雫ひとしずくが身に染みたら、荒鷲あらわしはしに貫かれぬお雪の五体も裂けるであろう。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吉彦よしひこさんがいった。四郎五郎しろごろうさんのいえ正男まさおさんは、うみ荒鷲あらわし一人ひとりで、いまみなみそら活躍かつやくしていらっしゃるのだ。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「そうか。それにフーラーさんと『荒鷲あらわし』がたすかったからな。あのものすごい爆発の火のなかから、さっと『荒鷲』がとび出した時には、わしもびっくりしたよ。」
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
飛退とびのひまに雀の子は、荒鷲あらわしつばさくぐりて土間へ飛下り素足のまま、一散に遁出にげいだすを、のがさじと追縋おいすがり、裏手の空地の中央なかばにて、暗夜やみにもしるき玉のかんばせ目的めあてに三吉と寄りて曳戻ひきもどすを振切らんと
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
荒鷲あらわしける
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「悲しいはずだよ。米国のフーラー博士は、もう荒鷲あらわし爆撃機をこしらえたのに、兄さんの『富士』はまだこれからだからねえ。口惜しいけれど、兄さんは負けているんだ。」
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)