さう)” の例文
「橋の向うの三さうの矢は、皆んな橋げたの間から飛んで來ましたが、四本目の今度の矢は、土手の方角から飛んで來たことになります」
そして右手に長く寝そべつてゐる、一さうの新造船を指さした。「あれが一噸四百円のお引受でしたもの、今ぢや四百五十円を一文欠きましても……」
武裝した軍兵百人を載せた大舟と、二さうの小舟とから、此舟番は成り立つてゐる。利安等はすきうかゞつてゐたが、どうも舟番所を拔ける手段が得られなかつた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
舟は暫時しばらく大船小船六七さうの間を縫ふて進んで居たが間もなく廣々とした沖合に出た。月は益々冴えて秋の夜かと思はれるばかり、女は漕手こぐてとゞめて僕の傍に坐つた。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
つゝみの上に長くよこたはる葉桜はざくら木立こだち此方こなたの岸から望めばおそろしいほど真暗まつくらになり、一時いちじ面白おもしろいやうに引きつゞいて動いてゐた荷船にぶねはいつのにか一さう残らず上流のはうに消えてしまつて
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それめたといふのであつたらう、忽ちに手対てむかふ者を討殺うちころし、七八さうの船に積載した財貨三千余端を掠奪し、かよわい妻子を無漸むざんにも斬殺きりころしてしまつたのが、同月十九日の事であつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ひとゆめにもらない海賊島かいぞくたうといふのがあるさうだ、無論むろん世界地圖せかいちづにはこと出來でき孤島こたうであるが、其處そこには獰猛どうまう鬼神きじんあざむ數百すうひやく海賊かいぞく一團體いちだんたいをなして、迅速じんそく堅固けんごなる七さう海賊船かいぞくせんうかべて
海はいでゐて、静かな海面にたこをとる舟が三、四さううかんでゐた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
おん船に従ひ奉る船三百余さうなり——とはあるが、べつの箇所では
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ベンヺ 二さう々々/\男襦袢をす女襦袢めすぢゃ。
同じ夜、子刻こゝのつ過ぎ、永代のあたりから漕ぎ上がつた傳馬が一さう、濱町河岸に來ると、船頭がともの灯を外して、十文字に二度、三度と振りました。
ふと見れば、桟橋さんばしに一さうの舟がつないであつた。船頭が一人ともの方にうづくまつてゐる。土地のものが火事なんぞの時、荷物を積んで逃げる、屋形やかたのやうな、余り大きくない舟である。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
今までのは橋の下より少しづつ下流に向つた方でしたが、四さう目の船は橋架はしげたの下を潜つて、川上の方にあつたことは、何にかの暗示になりさうです。
かねて約束があつたものか、稻荷橋下にもやつてゐる一さうの傳馬から、一人の船頭がヌツと身を起しました。