聟君むこぎみ)” の例文
恥ずかしくない家がらで都会の子弟とあっては、伊豆の片田舎からわざわざ妻をめとろうなどという聟君むこぎみは、まずないと云ってもよい。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤心まごゝろばかりはびとにまれおとることかは、御心おこゝろやすく思召おぼしめせよにもすぐれし聟君むこぎみむかまゐらせて花々はな/″\しきおんにもいまなりたまはん
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一番繁く出入して当人たしか聟君むこぎみ登第とうだいえいを得るつもり己惚うぬぼれてゐるのが、大学の学士で某省の高等官とかを勤める華尾はなを高楠たかくす
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
……あなたの聟君むこぎみのいらっしゃる所に着いたのですぞ。さあ、下りなさい。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
「——登子さまの方でも、わが聟君むこぎみとなる人はたれか、それさえご存知なくして、お輿入こしいれを得心あろうはずもござりませねば」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
廿歳はたちといふもいまなるを、さかりすぎてははな甲斐かひなし、適當てきたう聟君むこぎみおむかへ申したきものと、一專心せんしんしうおもふほかなにもし、主人しゆじん大事だいじこゝろらべて世上せじやうひと浮薄ふはく浮佻ふてう
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
憚りながら嬢様の聟君むこぎみを択ぶ権は俺にあるんだ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
光秀は、自身、幼年から斎藤家に身をおいて、旧主道三山城守に扈従こじゅうして、その聟君むこぎみたる彼の人間も眼にているので、いうところには、根拠があった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちやして大奧おほおくにもたかく、お約束やくそく聟君むこぎみ洋行中やうかうちうにて、寐覺ねざめ寫眞しやしんものがたる總領そうりやう令孃ひめさへ、垣根かきねさくられかし吾助ごすけ、いさヽかの用事ようじにて大層たいそうらしく、御褒美ごはうびたまはる菓子くわし花紅葉はなもみぢ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「このたびの、御縁組でございまする。佐々どのの御本心は、決して御両家の和をおもうておられるのでもなし、利家様の御次男を、自身の姫の聟君むこぎみへ、心から望んでいるのでもありませぬ」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雪三せつざう斷然だんぜんことはり申す御歸邸ごきていのうへ御前体ごぜんていよろしくおほげられたしといひはなてば、おぼせあらんとはぞんぜしなり、しからば聟君むこぎみとしてはむかへさせたまはずやといふ、いなとよかく御身分柄ごみぶんがらつりはず
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「親としては、あの温厚で沈着な犬千代どのなら、よい聟君むこぎみと、実はよろこんで——約束までしてしもうたわけでござるが、なんとよ、近ごろの娘は、親の眼がねにも、そのことばかりはと、素直には、うなずかぬのじゃ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)