緋鯉ひごひ)” の例文
はだか飛込とびこんだ、侍方さむらひがたふねりはつたれども、ほのほせぬ。やつとのおもひでふねひつくらかへした時分じぶんには、緋鯉ひごひのやうにしづんだげな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あるがなかにも薄色綸子うすいろりんず被布ひふすがたを小波さヾなみいけにうつして、緋鯉ひごひをやる弟君おとヽぎみともに、餘念よねんもなくをむしりて、自然しぜんみにむつましきさヽやきの浦山うらやましさ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
隣りの寺の庭にある池から、時々緋鯉ひごひのはねる水音がして、急に靜まつた深夜の靜けさを破るのが聞えた。
緋鯉ひごひの背の浮ぶ庭の池の飛石に、鶺鴒せきれいが下りて來て長い尾を水に叩いてゐる。さうして紺青こんじやうの空! このうるはしい天日の下に、一體何が世には起つてゐるのか?
嘘をつく日 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
あどけなく緋鯉ひごひのむれにたはむるゝいぢらしきさまのあたり見ゆ
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そりやおなところんでるから、緋鯉ひごひくが當前あたりまへだけれどもね、きみが、よくお飯粒まんまつぶで、いと釣上つりあげちやげるだらう。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一方いつぱう明窓あかりまど障子しやうじがはまつて、其外そのそとたゝみ二疊にでふばかりの、しツくひだたきいけで、金魚きんぎよ緋鯉ひごひるのではない。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
緋鯉ひごひ立派りつぱだから大將たいしやうだらうが、ふな雜兵ざふひやうでもかずおほいよ……かた一杯いつぱいなんだもの。」
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ぢや、ぼくとこ蓮池はすいけ緋鯉ひごひなんかうするだらうね?」
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)