眞紅まつか)” の例文
新字:真紅
はな眞紅まつかなのが、ゆる不知火しらぬひ、めらりとんで、荒海あらうみたゞよ風情ふぜいに、日向ひなた大地だいちちたのである。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
眞紅まつかな奴が枝も裂けさうになつてるのへ、眞先に僕が木登りして、漸々やう/\手が林檎に屆く所まで登つた時「誰だ」つてノソ/\出て來たのは、そら、あの畑番の六助爺だよ。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
いつも鎧戸よろひどおろしたまゝの、二つの大きな窓には、同じ色の帷帳カアテン花綵飾はなづなかざりがたるんで、半分覆うてゐた。ゆか絨毯じゆうたんも紅く、寢臺の足許の卓子テエブルにも、眞紅まつかきれが掛かつてゐた。
御覽ごらんなさい、眞紅まつかおびめてむすめますよ。』
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
眞紅まつか毛氈もうせんいたかと、戸袋とぶくろに、ひなまぼろしがあるやうに、夢心地ゆめごこちつたのは、ひとはゞ一面いちめんであつた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
無理強ひの盃四つ五つ、それが悉皆すつかり體中にまはつて了つて、聞苦しい土辯の川狩の話も興を覺えた。眞紅まつかな顏をした吉野は、主人のカッポレをしほ密乎こつそりと離室に逃げ歸つた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
仙人せんにんが、あのひろそでなかから、眞紅まつかな、粘々ねば/\した、つやのある、へびうろこのやうな編方あみかたした、一條ひとすぢひもしていとほどにも、うごきませんほど、手足てあし大木たいぼく確乎しつかりいはへて、綿わたまるけたたま
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)