目散もくさん)” の例文
このあいだに与吉は、肩の壺を地面へほうり出して、キリキリ舞いをしていたが、やがて方向がきまると、一目散もくさんにかけ出した。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
前つぼのかた草履ぞうりさきすなって、一目散もくさんした伝吉でんきちは、提灯屋ちょうちんやかどまでると、ふと立停たちどまって小首こくびかしげた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
するとうさぎなんおもつたか大急おほいそぎで、しろ山羊仔皮キツド手套てぶくろおとせば扇子せんす打捨うツちやつて、一目散もくさんやみなかみました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
すゝんでつた鹿しかは、くびをあらんかぎりばし、四本しほんあしきしめきしめそろりそろりと手拭てぬぐひちかづいてきましたが、にはかにひどくびあがつて、一目散もくさんもどつてきました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
今夜こんやはたまらないのだとおもって、だまってしたていますと、おおかみは、きゅうはらだたしそうに、もう一たかこえさけびをあげると、荒野あれのを一目散もくさんに、あちらへとけていってしまったのです。
春になる前夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なにとかしけん横町よこてうかどにて巡査じゆんさをばふりはなして一目散もくさんげぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「はい。外のほうが安全で、ピカリッ抜いたッと来りゃア一目散もくさん古語こごにも申します。君子くんし危きに近よらず——」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あいようがす……なアんてね、へえ、それでその、私が奥州街道を一目散もくさん……アアくたびれた
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)