癩病らいびょう)” の例文
世間のわからず屋が、彼を癩病らいびょうやみのように扱うなら、私は平気で先生のそばへしゃがみ、その顔へ、この人間の顔を近寄せてやる。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「可哀そうな病人でございます。癩病らいびょう脱疽だっそ労咳ろうがいかく、到底なおる見込みのない病人達でございます」これが松虫の返辞であった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
おどろくまい事かすき通るほど光ってござった王子はまるで癩病らいびょうやみのように真黒まっくろで、目は両方ともひたとつぶれてござらっしゃります。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
この村には癩病らいびょうは多い。それがためかどうかは知らぬが、今までは一切他の村と結婚などはしなかつたといふ事である。(五月二十九日)
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
義龍は、癩病らいびょうで「癩殿らいどの」と蔭口をいわれたりしているが、宿命の子だけに、性格はつむじ曲りで、智謀も勇もある。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
癩病らいびょう病院に血痕のある木! れしもあまり心持こころもちがしない、こんな場所だから昼間でも人通りがすこぶる少ない、ことに夜にっては、はなはだ寂しい道であった。
白い蝶 (新字新仮名) / 岡田三郎助(著)
略奪から賤夫せんぷが生まれる。敵によって糧を得よといういやしむべき格言は、この種の癩病らいびょうやみを作り出した。それをなおすにはただ厳酷な規律あるのみである。
お蝶さんは、ひなにはめずらしい美人でした。然しお蝶さんの血管には、怖ろしい毒血が流れて居たのです。一口にいえばお蝶さんは癩病らいびょうの血統を持って居ました。
狂女と犬 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
肺病なら矢張今日では癩病らいびょうに次いで嫌われるのだが、その頃には一向問題にしていなかった。
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
癩病らいびょうになって死と闘う心持から書いたものとか、砲弾がドンドン云っているところで書かれたものとかいうものに、変に感傷的に感動し、過重評価する一種の病的傾向に陥っている。
この男木作りかとそしる者は肉団にくだん奴才どさい御釈迦様おしゃかさまが女房すて山籠やまごもりせられしは、耆婆きばさじなげ癩病らいびょう接吻くちづけくちびるポロリとおちしに愛想あいそつかしてならんなど疑う儕輩やからなるべし、あゝら尊し、尊し
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
十七ばかりになる娘との親子三人ぐらしであった、ところがこのうちというのは、世にも哀れむべき、癩病らいびょう血統すじなので、娘は既に年頃になっても、何処どこからも貰手もらいてがない、娘もそれをさとったが、偶然ふと
千ヶ寺詣 (新字新仮名) / 北村四海(著)
この強健な土地のもっともうるわしい特質を汚す旅館の癩病らいびょう、世界の肥満した人々が健康をあがないに来る奇怪な市場たる外国人の町々、さら数のきまった食事、動物の塚穴つかあなの中に投げ捨てられた獣肉の濫費
「それはひどいな。ほんとですか。しかしそういう受難は聖者の生涯には附きものですね。人に賤しめられしりぞけられてこそ聖者でしょ。まあ癩病らいびょう人みたいなものだな。誰もその毫光ごうこうには気がつかない。」
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)
癩病らいびょうの崩れの金光燦爛さんらんたるこの「奢侈」。
癩病らいびょうだよ」
(新字新仮名) / 島木健作(著)
癩病らいびょうの男が
貧しき信徒 (新字新仮名) / 八木重吉(著)
それはまだ私の学校時代の事だから、彼処あすこらも現今いまの様ににぎやかではなかった、ことにこの川縁かわぶちの通りというのは、一方は癩病らいびょう病院の黒い板塀がズーッと長く続いていて
白い蝶 (新字新仮名) / 岡田三郎助(著)
壁は癩病らいびょうやみのようなありさまを呈し、種々の傷跡がいっぱいあって、あたかも恐ろしい病のために相好をくずされたかのようだった。じめじめした気がそこからにじみ出していた。
癩病らいびょう患者ででもあるのであろうか?
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私はふところに手を差入れながら黙って来た、私の頭脳あたまの内からは癩病らいびょう病院と血痕の木が中々なかなか離れない、二三の人にも出会ったものの、自分の下駄の音がその黒塀に淋しく反響して
白い蝶 (新字新仮名) / 岡田三郎助(著)