うむ)” の例文
今この婦人おんな邪慳じゃけんにされては木から落ちた猿同然じゃと、おっかなびっくりで、おずおず控えていたが、いや案ずるよりうむが安い。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
沢山の色が自由になると云う事がい事で又悪い事だなどと云う事もあった。悲劇をうむとも云った。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
さて此一掘ひとほりうみをはれば又それにならべりてはうみ、うみてはほり、幾条いくすぢもならべほりてつひには八九尺四方の沙中すなのなか行義ぎやうぎよくはらをのこらずうみをはる。あるひは所をかえてもうむとぞ。
御連おつれ申ただけもつけの幸ひあんじるよりうむが安いとは此事なるべしと道々みち/\はなながら馬喰町ばくろちやうへぞかへりける是より長兵衞長八は相談さうだんして大橋文右衞門の一件を證人しようにんになりて訴へ出んと願書を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すると案じるよりうむが安いで、長い間こうやって一所に居るが、お前様の断念あきらめの可いには魂消たまげたね。
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
子をうみつける所はかれが心にありて一定いちぢやうならずといへども、千曲ちくま魚野うをのりやう河のがつする川口といふよりすなに小石のまじるゆゑ、これよりをおのれがうむ所とし、ながれの絶急はげしからぬ清き流水りうすゐの所にうむ也。
思ひ付たれば或夜おかねと忍びの物語りに我等如何なるえんりてか其の方とかく深き中なりと腹に子まで妊せし上は末長すゑながく夫婦に成べき所存しよぞんなり然ながら今は互に奉公ほうこうゆゑ自由じいうには成難し然れども追々月もかさなりては奉公ほうこうも成まじ因て一先宿へ下りおろすともうむともして又々奉公に出られよ尤も宿へ下るに只は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
嬌瞋きやうしんはつしては屹度きつといことはあるまい、いま婦人をんな邪慳じやけんにされてはからちたさる同然どうぜんぢやと、おつかなびつくりで、おづ/\ひかへてたが、いやあんずるよりうむやすい。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)