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ガラス
ふりがな文庫
“
玻璃
(
ガラス
)” の例文
春蚕
(
はるご
)
の済んだ後で、刈取られた
桑畠
(
くわばたけ
)
に新芽の出たさま、
林檎
(
りんご
)
の影が庭にあるさまなど、
玻璃
(
ガラス
)
越
(
ご
)
しに光った。お雪は
階下
(
した
)
から上って来た。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
室内が煙で一ぱいになつたので南側の
玻璃
(
ガラス
)
窓を開けた。何時しか夕暮が迫つて大川の上を烏が唖々と啼いて飛んでゐた。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
一つ登れば、そのまま次に
玻璃
(
ガラス
)
を張ったような蒼い氷の壁が現われる。八寒地獄の
散歩道
(
プロムナード
)
もかくやと思われるばかり。
ノンシャラン道中記:07 アルプスの潜水夫 ――モンブラン登山の巻
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「クラウディオ・アクワヴィバ(
耶蘇
(
ジェスイット
)
会会長)回想録」中の、ドン・ミカエル(千々石のこと)よりジェンナロ・コルバルタ(ヴェニスの
玻璃
(
ガラス
)
工)に送れる文。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
二重
(
ふたへ
)
の
玻璃
(
ガラス
)
窻を緊しく鎖して、大いなる陶炉に火を焚きたる「ホテル」の食堂を出でしなれば、薄き外套を透る午後四時の寒さは殊さらに堪へ難く、
膚
(
はだへ
)
粟立
(
あはだ
)
つと共に
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
自分は南向きの窓の下で
玻璃
(
ガラス
)
越しの日光を
避
(
よ
)
けながら、ソンネットの二、三編も読んだか。
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
黒眼鏡は、その黒い
玻璃
(
ガラス
)
の奥で、お光さんの顔を、恐怖にみちた目で見つめたままだった。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何時の間にやって来て、いつ動き出すか分らないが、きまったように窓窓にカーテンをおろしながら、街燈と街燈との間の暗みに、にぶい
玻璃
(
ガラス
)
窓を光らしながら置かれてあった。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
箪笥の上には高価な指輪が二つと、ダイヤ入りのブローチが一つ、元のままに載っていて、陳列
玻璃
(
ガラス
)
函の中の骨董品にも手を触れた形跡がなく、
室
(
へや
)
の中は
整然
(
きちん
)
となっていたそうです。
ペルゴレーズ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
三田は縁側の
玻璃
(
ガラス
)
戸をしめて、寢床の上に大の字になつた。風に吹かれてゐる間は、すつかり醉もさめた氣でゐたが、横になつて見ると
深酒
(
ふかざけ
)
の名殘は蒸暑く胸から上に押上げて來た。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
廊下に向かった
巌丈
(
がんじょう
)
な扉へ、錠をしっかり
卸
(
おろ
)
してから、沙漠に面した
玻璃
(
ガラス
)
窓へも用心の為に鍵を
支
(
か
)
い、レースの
窓掛
(
カアテン
)
を引いてから、虫捕香水を布団へ振りかけ、それで安心したと見え
木乃伊の耳飾
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
相手の手には埃で袋でもかぶせたようになった一本の
玻璃
(
ガラス
)
壜が握られていた。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
面
(
おもて
)
の平でない
玻璃
(
ガラス
)
の爲めに、水
淺葱
(
あさぎ
)
に金茶の模樣が陽炎を透かしての如くきらきらといかにも氣持よく見える。一列の布の上に、遙かに黒き、其輪郭は廣重的に正しい梅村(?)橋が横はつて居る。
京阪聞見録
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
今日はあたかも
玻璃
(
ガラス
)
の中の物を
窺
(
のぞ
)
いて見てるように明麗であった。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
ごとごとぶるぶるゆれて顫へる窓の
玻璃
(
ガラス
)
春と修羅 第二集
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
どうかすると窓の
玻璃
(
ガラス
)
へ頭を打ちつけた。それほど、身体を
支
(
ささ
)
えることが出来なかった。新橋へ入ったのは未だ日の暮れない頃であった。
船
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
日ごろ鈍感なるコン吉も事態ここに至っては猛然憤起、無情にも眼の前に固く閉ざされた
玻璃
(
ガラス
)
扉をたたいて
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
壁は落ち、
襖
(
ふすま
)
は破れ、寒い透間の風はしん/\と骨を刺すやうに肌身を襲ふにしても、潤んだ銀色の月の光は
玻璃
(
ガラス
)
窓を洩れて生を誘ふがに峽谷の底にあるやうな
廢屋
(
はいをく
)
の赤茶けた疊に降りた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
冷たい
玻璃
(
ガラス
)
板へ息が曇っているように秋の特有な星雲が空に夜更けていた。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二月の末から三月へかけて、暖い日には宿の
玻璃
(
ガラス
)
戸の外を、海の方から來る鴎の群が、雪白の翼をひるがへして飛ぶ長閑な日もあつたが、終日その玻璃戸をがたがた鳴らして吹く風の日も多かつた。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
……建物中の
玻璃
(
ガラス
)
の窓が
春と修羅 第二集
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
差向ひに椅子に腰掛けたは運動場近くにある窓のところで、
庭球
(
テニス
)
狂
(
きちがひ
)
の銀之助なぞが呼び騒ぐ声も、
玻璃
(
ガラス
)
に響いて面白さうに聞えたのである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
玻璃
(
ガラス
)
張りの
天蓋
(
まるてんじょう
)
を透して降りそそぐ
煦々
(
くく
)
たる二月の春光を浴びながら、歓談笑発して午餐に耽る凡百の面々を眺め渡せば、これはさながら
魑魅魍魎
(
ちみもうりょう
)
の大懇親会。
ノンシャラン道中記:04 南風吹かば ――モンテ・カルロの巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
玻璃
(
ガラス
)
障子のところへ寄せて、正太の机が移してあって、その上には
石菖蒲
(
せきしょうぶ
)
の
鉢
(
はち
)
なぞも見える。水色のカアテンも色の
褪
(
あ
)
せたまま掛っている。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
光線の反射の具合で、
玻璃
(
ガラス
)
を通して見える子供の写真の上には、三吉自身が薄く重なり合って映った。彼は自分で自分の
悄然
(
しょんぼり
)
とした姿を見た。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
皆角帯、前垂掛で、お
店者
(
たなもの
)
らしく客を迎えている中で、全くの書生の
風俗
(
なり
)
が、巻きつけた
兵児帯
(
へこおび
)
が、その
玻璃
(
ガラス
)
に映っていた。実に、成っていなかった。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
二人が
塵払
(
はたき
)
の音のする窓の外を通った時は、岩間に咲く
木瓜
(
ぼけ
)
のように紅い女の顔が
玻璃
(
ガラス
)
の内から映っていた。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
其列車が山へ上るにつれて、窓の
玻璃
(
ガラス
)
に響いて烈しく動揺する。
終
(
しまひ
)
には
談話
(
はなし
)
も
能
(
よ
)
く聞取れないことがある。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
文平は
打球板
(
ラッケット
)
を提げて出て行つた。校長は椅子を離れて
玻璃
(
ガラス
)
の戸を上げた。丁度運動場では
庭球
(
テニス
)
の最中。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
湯気で曇った
玻璃
(
ガラス
)
の面を拭いてみると、狂死した父そのままの
蒼
(
あお
)
ざめた姿が映っていた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そこは以前書生の居た静かな部屋で、どうかすると三吉が仕事を持込むこともある。家中で一番引隠れた場処である。お種が大事にして旅へ持って来た鏡は、
可成
(
かなり
)
大きな、厚手の
玻璃
(
ガラス
)
であった。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
濡
(
ぬ
)
れて光る夜の町々の灯——白い灯——紅い灯——電線の上から落ちる青い電光の
閃
(
きらめ
)
き——そういうものが窓の
玻璃
(
ガラス
)
に映ったり消えたりした。寂しい雨の中を通る電車の音は余計に私を疲れさせた。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“玻璃”の意味
《名詞》
玻璃(はり, がらす)
古代インド、中国などで珍重された宝玉で七宝のひとつ。無色の水晶。
ガラスの異称。
(出典:Wiktionary)
玻
漢検1級
部首:⽟
9画
璃
常用漢字
中学
部首:⽟
14画
“玻璃”で始まる語句
玻璃窓
玻璃戸
玻璃器
玻璃盞
玻璃板
玻璃蛋白石
玻璃鐘
玻璃盃
玻璃扉
玻璃色