ない)” の例文
新聞を拾読ひろいよみしていたお政は眼鏡越しに娘を見遣みやッて、「欠びをして徒然つくねんとしていることはないやアね。本でも出して来てお復習さらいなさい」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ふくみ何にもないが一ツ飮ふと戸棚とだなより取出す世帶せたいの貧乏徳利干上ひあがる財布のしま干物さしおさへつ三人が遠慮ゑんりよもなしに呑掛のみかけたりお安は娘に逢度さを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お前がやれ量炭も買えんだのッてしく言うから昨夜ゆうべ金公の家へって借りようとしてないってやがる。それから直ぐ初公のとこへ往ったのだ。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
受けて無言だまって居るのですか覚えがないと言切てお仕舞いなさい貴方に限て其様な事の無いのは私しが知て居ますと泣きつ口説くどきつするさまに一同涙をもよおしました
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「げに、酒は美人に限ること古今相同じでげす」と丸井玉吾既に一盞いつさんを傾け尽くしつ「イヤ、どうも御禁酒のかたの代理と云ふ法もないわけでげすな、先生、飛んだ失礼を——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
小児こどもつみないことねえ、ほほほ。まあ。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
村のわんぱくに捕られたのぢやないか。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
殺す時機じき因果いんぐわづくだが斷念あきらめて成佛じやうぶつしやれお安殿と又切付れば手を合せどうでも私を殺すのか二人の娘にあふまではしにともないぞや/\と刄にすがるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
が、あやまッた文三は、——実に今まではお勢を見謬みあやまッていた。今となッて考えてみれば、お勢はさほど高潔でもない
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「馬鹿だなア」と川地はポカリ煙草をきつしつ、「裁判官は只だ法廷で、裁判するだけの仕事ぢやないか——法律なんて酌子定規しやくしぢやうぎ拘泥こうでいして、悪党退治が出来ると思ふか——フヽム」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
あはしては百年めといふ者サアなにも彼も決然きつぱりと男らしく言て仕舞しまへいふにぞ段右衞門コレ汝ぢは跡方あとかたないこしらへ事を言かけ我につみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あいのおさえのという蒼蠅うるさい事のないかわり、洒落しゃれかつぎ合い、大口、高笑、都々逸どどいつじぶくり、替歌の伝受など、いろいろの事が有ッたが、蒼蠅うるさいからそれは略す。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「けれど銀子さん、道時さんに何もおありなさるんぢやないでせう」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)