清々すが/\)” の例文
「しばらくの間、少しは清々すが/\しいところへいらつしやい。」と彼は云つた。「あの家はまるで牢獄だ。そんな感じがしませんか?」
昨日からのかなりの疲れのなかにも、清々すが/\しく樂しかつた氣分が、たちまちよごれて行き、元氣まで失はれて行くやうな氣がした。
生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
しよう。わしが生命いのちよりもいとしく思ふその清々すが/\しい微笑ほゝゑみを消さずに、お前の唇のうへを通るものなら、それこそ、どんな話でも聴かう……
職業(教訓劇) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
さる程にわれ、今朝の昧爽まだきより心地何となく清々すが/\しきを覚えつ。小暗をぐらきまゝに何心なく方丈の窓を押し開き見るに、思はずあつと声を立てぬ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
其がなんと此世の悪心も何もかも忘れ果てゝ清々すが/\しい心になりながら、唯そればかり一念となつて、残つて居ると申します。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
さて、温泉宿ゆのやどかへつたが、人々ひと/″\は、雪枝ゆきえかほいろ清々すが/\しいのをながめて、はじめてわたした一通いつつう書信しよしんがある。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
立ち出づ宿しゆくの朝景色何處いづこも勇ましく甲斐々々しく清々すが/\しきものなるが分きて此宿このしゆくは馬で心よく搖られ行く爲か面白し宿しゆくを離るれば諏訪の湖水朝霧立こめて空も雨を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
夜が清々すが/\と明放れた頃には、智惠子はもう一人で便所にも通へぬ程に衰弱した。便所は戸外そとにある。お利代が醫者に驅附けた後、智惠子はこらへかねて一人で行つた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
陽は西に傾きかけて、雨後の清々すが/\しい川風が、衣袂いべいを吹いて妙に總毛立たせます。
雲や大洋の動くやうに悠々いう/\と動いてゐる。その癖細かいところはちやんと見逃みのがしてゐません。一番上の葉が一寸ねぢれて、ひら/\舞つてゐるでせう。あれがいかにも繊細です。清々すが/\しい。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
畳も新しくて清々すが/\しいのである。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
歐羅巴から吹く爽やかな風は猶も清々すが/\しく洗はれた木の葉の間に囁いて、大西洋は豪壯に轟いてゐます。
清々すが/\しいの、なんのつて、室内しつないにはちりひとツもない、あつてもそれ矢張やつぱ透通すきとほつてしまふんですもの。かべ一面いちめんたまの、大姿見おほすがたみけたやうでした、いろしろいんですがね。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それと同時に、清々すが/\しい紫の束が、プラツトフオームの小砂利の上に崩れ落ちた。
桔梗の別れ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
障子の外の清々すが/\しい青葉を眺め乍ら、八五郎は不器用な指などを折ります。
清々すが/\しいのは、かけくちをちら/\と、こぼれて、やまぷんかをる、ひのきまきなど新緑しんりよくである。松葉まつばもすら/\とまじつて、浴槽よくさういて、くゞつて、るゝがまゝにふ。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
歸り路、朝の清々すが/\しい風に吹かれ乍ら、平次は訊きました。
急に頭のてつぺんが清々すが/\したよ。
ここに弟あり (新字旧仮名) / 岸田国士(著)